2002年(平14)のサッカーW杯日韓大会で優勝した、ブラジル代表MFエジミウソン氏(45)が4日、都内で会見を開き、貧困でサッカーを続けることが困難な日本の子どもを支援する財団「エジミウソンファンズ・アジア」設立を発表した。困窮した家族を支えるため、サッカーを辞めようか悩んだ30年前に助けてくれた日本人の親友から、コロナ禍で経済的に苦しむ日本の子どもを支援したいと聞き、立ちあがった。

エジミウソン氏は、02年のW杯で優勝した際、貧困と隣り合わせだった人生を振り返り「子どもたちに還元し、愛を持って向き合いたい」と痛感。バルセロナに在籍した05年に故郷タクリアティンガに私費を投じてエジミウソン財団を設立し、子どもに教育やスポーツの機会を与えてきた。

その根底にあったのは、ユース時代にともに汗を流したサッカー留学生で、後に川崎Fにも在籍した林善徹氏への友情と恩義だった。92年に地方クラブのキンゼ・デ・ジャウーで出会った2人は同い年ですぐに意気投合。エジミウソン氏は林氏にポルトガル語を教え、夜練習にも付き合った。

そんなある日、エジミウソン氏は父の仕事が厳しくなり、林氏に「家族の生活を支えるためにサッカーを辞めて働くことになるかも知れない」と打ち明けた。同氏は仕送りの中から当時、4カ月は生活できる金額に当たる300ドルを快く手渡した。サッカーを辞めずに済んだエジミウソン氏は、94年に親善試合で対戦した名門サンパウロに引き抜かれ、その後、世界屈指のMFに飛躍した。同氏は「人生には助けが必要な時がある。選手を目指す中で1番、難しい時期に支えてくれたのが林」と感謝した。

今後は公式サイトやクラウドファンディングで支援を募り、18歳以下でサッカークラブに所属し、経済的に続けるのが難しい選手に、クラブを通じて10万円の給付型奨学金を来年の年明けから給付していく方向だ。会見を前に、54人の子どもたちにサッカーを指導したエジミウソン氏は「コロナの影響で全世界、難しい状況に陥った中で、子どもたちとの機会を持て、笑顔を見て楽しむことが大事だと感じた。子どもたちのために出来るだけのことをやりたい」と力を込めた。【村上幸将】

○…エジミウソン氏と林氏が出会ったキンゼ・デ・ジャウーは、JFL鈴鹿ポイントゲッターズのFWカズ(三浦知良、55)がプレーしたクラブとしても知られる。エジミウソン氏は“先輩”カズについて聞かれると「カズさんはブラジルでも知られていますし、活躍すれば新聞にも出ますよ」と声を大にした。その上で「あなたが、これからも長くプレーできますよう、私も応援しています」とカズにメッセージを送った。

◆エジミウソン・モラエス 1976年7月10日、ブラジル・サンパウロ州生まれ。91年にキンゼ・デ・ジャウーの下部組織に入団し翌92年に林氏と出会う。94年にサンパウロに移籍。00年にフランス1部リヨンに移籍。欧州リーグ初挑戦だったが3連覇に貢献し、04年に世界屈指の名門バルセロナに移籍。05年にはスペイン1部とスペインスーパー杯の2冠獲得に貢献。12年に母国のセアラーで引退。ブラジル代表には00年7月のパラグアイ戦でデビューし39試合出場1得点。