選挙戦最後の週末を迎えた2日、自民党は「最重点区」の青森に麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長が入り、22年ぶりの角界出身国会議員を目指す元関脇追風海(はやてうみ)の斉藤直飛人氏をテコ入れした。

青森は衆参5議席のうち4議席を自民党が持つ保守王国だが、2016年の参院選で現職が野党統一候補の田名部匡代氏に8052票差で敗れ、議席を失った。自民党にとって議席奪還は悲願で、06年の引退後、青森に戻り、板柳町議、県議を計10年務めた斉藤氏を2月に公募で擁立した。

青森といえば、初代貴ノ花、舞の海、高見盛ら多くの人気力士を輩出している相撲どころ。ただ、追風海はけがで幕内と十両を行き来し、休場が多かったためか「(板柳中、日大で1年後輩の)高見盛は知っていても追風海のことは…」(自民党関係者)。名前は浸透していなかったという。公示日に、舞の海の出身地の鰺ケ沢町で街頭演説した小泉進次郎氏も「今日ばかりは舞の海ではなく、追風海を覚えていただきたい」とあいさつした。

選挙カーには追風海時代の写真がラッピングされ、キャッチフレーズは「日本の難題にがっぷり四つ!」。ホームページには「22年ぶり、大相撲出身の政治家。国政も待ったなし」「この広い背中に未来を背負わせてほしい」と書かれ、陣営は角界出身を前面に出している。ただ、斉藤氏は「相撲をやっていたやつが政治ができるのかと言われ続けながらも、大相撲にいたときよりも政治の年数の方が長くなりました。いろんな経験をしたからこそ、皆さんの気持ちが分かる。全力で頑張っていきます」と訴える。政治の世界で10年。大相撲の8年間を超えていることが本人のアピールポイントだ。

名古屋場所が迫っているため、大相撲関係者が応援のため青森に入ることはないが、元横綱日馬富士のダワーニャム・ビャンバドルジ氏が6日、個人演説会に出席する。投開票日の10日は名古屋場所初日。「日に日に感触は良くなっています」と話す斉藤氏に、最後は得意の右四つから寄り切りますかと尋ねると、「ハハハ。そうですね」と笑った。【中嶋文明】

◆角界と国政選挙 第34代横綱男女ノ川は終戦翌年、1946年の衆院選に東京2区(当時定数12)から出馬。4377票しか獲得できず、133人中69位で落選した。元小結旭道山は小選挙区比例代表並立制が導入された96年の衆院選に新進党から比例代表近畿ブロックに立候補(比例名簿順位10位)。当選し、2000年まで1期務めた。元関脇荒勢は01年の参院選比例代表に自由連合から出馬したが、2711票で惨敗した。海外では元小結旭鷲山が08年、モンゴル議会選挙でトップ当選。12年まで務めた。元大関把瑠都は19年、エストニア議会の選挙に出馬。次点だったが、繰り上げ当選した。

◆追風海(はやてうみ) 日大時代に学生横綱となり、1998年春場所に幕下付け出しでデビュー。00年春場所に新入幕し、同年九州場所で新関脇。幕内を22場所務め、技能賞を1回受賞した。しかし、首やひざなど度重なるけがに苦しめられ、05年秋場所からは幕下に。翌06年1月に引退。09年に出身地の板柳町に戻り12年に青森県板柳町議選で初当選を果たした。