東京・銀座の百貨店「松屋銀座」にお目見えした冷凍食品売り場が好調だ。8月末に自社運営の常設売り場「GINZA FROZEN GOURMET(ギンザ・フローズン・グルメ)」としてオープン。以来、想定の2~3倍のペースで売り上げている。スーパーやコンビニとは一線を画し、銀座の名店4店のブランド「銀ぶらグルメ」を中心に、コロナ禍で足を運ぶことができなくても変わらない味が再現できると評判を呼んでいる。お歳暮、クリスマスパーティーや新年会など、年末年始商戦の新たな主役に躍り出る。
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「ホントに冷凍食品なの?」。これが正直な感想だ。8月上旬、都内で行った「銀ぶらグルメ」試食会。「銀座日東コーナー1948」の「ロールキャベツ トマトソース」、「銀座吉澤」の「松阪牛シルクハンバーグステーキ」、「銀座みかわや」の「舌平目かに肉包揚げ」、「ピエスモンテ」のチョコケーキにバニラムースとサクランボを合わせたスイーツ「フォレノワール」と、各店自慢のメニューが並んだ。「ギンザ・フローズン・グルメ」の主軸となる老舗レストランの味は、急速冷凍→解凍されても保たれていた。
これらに百貨店初登場の親子丼でおなじみ、東京・人形町の「玉ひで」、中華料理の老舗「銀座アスター」、全国の海の幸を液体急速冷凍した「凍眠市場」の鮮魚などが加わった。取り扱うのは総菜、ご飯物、麺類、パンやピザ類、お菓子など50ブランド、350種類。9月から来年2月まで5000万円を目標にしていた売り上げは、当初の2~3倍という。
作り手側を代表して銀座日東コーナーの竹田大作社長(44)は、「消費者の冷凍食品への認知レベルが高いうえ、急速冷凍機の技術の向上や小型化が追い風になった。販売ルートのマルチチャンネル化も大きい」と、好調の理由を説明する。
2年前、コロナ禍の大逆風に飲食店は大打撃を受けた。竹田社長の店舗も同様で、売り上げは最盛期の1割。代替え手段としてデリバリーを考え、「おいしい銀座デリバリー」というサイトを立ち上げた。同時に冷凍食品の道も模索していた。事業再構築の助成金も申請。急速冷凍機を昨年1月に購入した。
通販でコラボしていた「銀座みかわや(渡仲晋平専務)」、デリバリーサイトで冷凍のチーズケーキを扱っていた「ピエスモンテ(下村昌輝社長)」、自社で冷凍食品を扱っていた「銀座吉澤(吉澤裕介専務)」とつながった。これに昨年7月から「中食」の需要増大に注目していた売り手側の松屋が、今年3月に声をかけた。販路が確保された。
松屋銀座ではコロナ禍の最中、「冷凍食品はないの」という消費者の声を耳にしていた。コンビニやスーパーで冷凍食品のスペースが広がっているのも見ていた。「3個で1000円セールの特売品と別に、単価6000~7000円の設定でも違いを出せる飲食店を探していました。うまく点と点が、線でつながりました」。松屋銀座の今井克俊担当課長(52)は「運」と「縁」を強調した。
銀座の作り手と売り手がワンチームとなって、「おもてなしのできる冷凍食品」ができあがった。スタートは上々。松屋では、オンラインストア限定の今年のお歳暮として「冷凍食品ギフト」を出している。
「銀座のために何かやりたい。できる範囲で銀座を盛り上げたい」。両者の思いは、買い手という消費者に支えられている。【赤塚辰浩】
■冷凍食品国内生産量コロナ禍でアップ
日本冷凍食品協会(東京都中央区)によると、昨年の冷凍食品の国内生産量は、約160万トン(前年比約3%増)、生産金額は約7371億円(同約5・2%増)だった。輸入された冷凍野菜約107万トンと調理冷凍食品約23万6000トンを合わせ、国民1人あたりの消費量は23・1キロとなる。
調査を開始した1968年(昭43)の国内生産量が約7万7100トン、冷凍野菜の輸入約1109トン、合計約7万8200トンで、国民1人あたり0・8キロの消費量だから、飛躍的に伸びている。
昨年の冷凍食品業界は、20年から続くコロナ禍による自粛、在宅勤務、「おうち時間」の増加に加え、時短や簡便を求める共働き世帯、高齢世帯の増加で家庭用冷凍食品の需要が高まっている。特に、ここ数年は主食を伴う食卓への冷凍食品の需要が増えた。「簡単かつおいしい」商品に人気が集中。また、器の必要がないトレー付き、袋のまま食べられる麺類やチャーハン、おかずとご飯のセットが注目されている。
■味の素の冷凍ギョーザ 五輪選手村60万個
世界のアスリートから「金メダル」の評価をもらったのが、「味の素の冷凍ギョーザ」だ。昨年の東京五輪の期間中、製造、販売する「味の素冷凍食品」では60万個を出荷。選手村の食堂で提供され、参加した選手たちが大絶賛した。
冷凍食品は1920年(大9)、北海道森町で魚を凍結したのが始まり。冷蔵庫や電子レンジの普及とともに発展し、ギョーザのほかにコロッケ、ハンバーグ、シューマイ、エビフライが市場に定着。手間抜きで手っ取り早く味わえる逸品として、完全に定着した。
味の素のギョーザは商品化されて今年で50年。「油なしでパリッと焼ける」「油・水なし」などの革命も起こし、ギョーザ売り上げ日本一を誇ってきた。今年8月には「黒豚大餃子」「海老大餃子」も全国発売。「メイン料理として堂々と出せる満足感と特別感」がある、おかずの主役になっている。

