5日、東京・豊洲の東京中央卸売市場で2023年初競りが開かれた。ホンマグロ(クロマグロ)は、3年連続で仲卸「やま幸(ゆき)」と和食「銀座おのでら」のタッグチームが競り落とした。大間産212キロを3604万円で落札。1キロ単価は17万円。この日の取り引きで最高値の「一番マグロ」となった。取材した記者が実食してみた。

一番マグロは豊洲市場から表参道(渋谷区)のおのでらの回転すし店に運ばれ、約1時間で解体処理された。午後1時すぎから赤身とトロ各1貫の計2貫セットが1040円(税込み)の破格値で提供された。

1人につきひと皿限定メニュー。回転すし店に隣接する同じく銀座おのでらの立ち食いすし店の席が空いていたので、すかさず入店し、お客になった。最初に一番マグロのセットを頼んだ。おいしいことは認識できたが、口の中でまたたく間にとろけてしまい、しっかり味わう前に胃袋へ消えてしまった。

うーん、残念。立ち食いすし店は、メニューにはないお好みで注文ができるシステムであることを逆手にとった。握り職人の加井秀和さん(50)におそるおそる「もしかして、トロタク巻き(マグロのトロとタクワンをネタにした細巻き)とかオーダーできますか」と聞いたところ意外にも快諾。1人ひと皿限定の一番マグロ、姿形を変えると食べられるという“裏技”を見つけてしまった。

はごたえのあるタクワンが軽くたたいたトロに包み込まれ、赤酢シャリとノリにぐるんと巻かれた。断面のレッドとイエローが美しい。口に放り込むと赤酢シャリ、ノリ、タクワン、たたかれたトロが一気に押し寄せてくる。互いに邪魔にならず、甘みとうま味が口の中をぐるんと回って蒸発するようになくなってしまった。うまい。

隣に座った(立ち食い店だがカウンター8席にはすべてイスがある)中野祐三さん(43=横浜市)も「口溶けがよくてすぐになくなった。こんなトロと赤身は初めてです」と目を丸くしていた。加井さんも「マグロの質が素晴らしくて、握っている指まで気持ちよくさせてくれるマグロ。こんな経験は初めてかもしれない」とリズミカルにトロと赤身をネタに握り続けていた。【寺沢卓】