岸信夫前防衛相(衆院山口2区)は3日、議長公邸を訪れ、細田博之衆院議長あてに議員辞職願を提出した。7日の衆院本会議で許可される予定。首相補佐官も辞任した。

岸氏はかねて体調不良を訴えており、この日発表したコメントでも「昨今、病状が急速に悪化し、国会議員の職務を全うすることが難しくなった。任期を残し職を辞する形となり、国民の皆さまにおわび申し上げます」などと説明した。

岸氏の辞職が認められれば、山口2区では、安倍晋三元首相の死去に伴う山口4区のほか、千葉5区、和歌山1区と合わせて合計4選挙区での補選が4月11日告示、23日投開票の日程で行われる見通しだ。

岸氏はすでに、長男で秘書の信千世氏(31)を後継としたい考えを示しており、信千代氏が出馬を表明すれば、地元後援会も支援する構え。10増10減の選挙区割り変更に伴い、山口では現在4つある選挙区が3つの1減となることが決まっている中、「現職有利」との声もある新選挙区での候補者調整に出遅れないよう、早めに長男に地盤を譲りたいとする判断が、任期中の辞職を決めた1つの背景とみられている。

また、実兄の安倍氏の死去で、「安倍家」の名前が当面政界から消える見通しになったことを受け、「岸家」の流れは残したいという思いもにじむ。一方、政治家の世襲には批判も根強く、長男が地盤を継ぐことが正式に決まれば、世襲批判は避けられない。信千世氏は近く記者会見する見通しだ。

岸氏は商社勤務を経て、2004年参院選で初当選。2012年衆院選で衆院にくら替えし、現在4期目。菅内閣、岸田内閣で防衛相を務め、昨年8月の退任後は、岸田首相のもとで首相補佐官を務めていた。