元経産省のキャリア官僚で慶大大学院教授の岸博幸氏は1日、TBS系「サンデー・ジャポン」にVTR出演し、岸田文雄首相が先月末に発表した、今後とりまとめる新たな経済対策の1つの柱となっている「年収の壁」対策を「評価できない」とし、その内容に疑問を呈した。

「年収の壁」とは、パート勤務の人などが社会保険料を負担しないよう労働時間を抑えることを指し、従業員101人以上の企業で社会保険料の納付義務が生じる「106万円の壁」や、同100人以下の企業で夫の扶養から外れて社会保険料の納付義務が生じる「130万円の壁」がある。いずれも手取り額が減ることから「壁」を超えて働かないよう、働く側が調整するなどしている。

岸氏は、今回発表された岸田政権の「年収の壁」対策について「評価できないと思います。少なくとも、僕ら政策をやっている人間で、今回の経済対策、報道されている内容を評価している人間はほとんどいません」と切り捨てた。

「やらないよりはやったほうがいい」としながらも「そもそも年収の壁というのは、年金保険料を払わなくてもいい人が対象。保険料を払ってくれている人と比べて、アンフェア(不公平)ですよね。その不公平を是正するのがいちばん必要」と指摘した。

また、経済対策の中で「減税」というフレーズが多く登場する中、その対象が個人でなく企業向けのものだったことにも疑問を投げかけ、その背景を推測。「もしかしたら年内選挙の可能性を考えていらっしゃるはずですし、来年秋には(再選がかかる)自民党総裁選もある。当然、世間の評価というものはどうしても気にならざるを得ないと思う」と述べ、首相の「選挙対策」の1つであるとの見方を披露。「個人的にはそこまで評価を気にしないで、自分の理想を実現することだけやればいいのになあと思う。もったいないなと思います」と指摘した。