埼玉県の大野元裕知事は5日の定例会見で、前日4日に、外務省にトルコ共和国との相互査証(ビザ)免除協定の一時停止を求めたことをあらためて説明した。
同県川口市や蕨市では、トルコ国籍の在日クルド人をめぐる共生問題が指摘され、社会問題化している。
会見では、記者からは「専門家から、(査証の)一時停止をしても、知事が目的とする体感治安の改善効果が出るか疑問の声がある」との指摘とともに、一時停止の意図や得られる効果を聞かれた。
大野知事は「評論家の方々が何をいわれたか存じ上げてませんけど、私たちは複合的に治安対策を行ってまいりました」とし、県の行政では直接的な法執行や治安維持の権限はないものの、治安に関する住民の不安を対処するため、川口北署の整備、大幅な警察人員拡充を国に働きかけ「可能な限り、行政としての措置を行ってまいりました」と説明した。
その上で「(入管の)出口について、難民申請を行った人が繰り返していることについては、早期の対応、ということを、国で行ってきていただいたわけですけど、問題は、仮にそういった方がきちんと対処されない場合は…入管や領事政策は国の権限ですけど、国の措置で、結果として、そのしわ寄せが地域の住民に来て、体感治安が悪くなる、ということがある、と考えております」と、現状の国の対応では解決に至っていないとの認識をあらためて表明。難民認定の申請期間の基準が60日であることを示すと「平均で、基準の処理期間をはるかに超えて、2年、3年という状況になってきていて、結果として、そのしわ寄せが地域に及ぶということになってきています」と訴えた。
大野知事は「自治体としては多くの住民の方、国籍や民族を問わず、共生社会を推進するのが自治体の仕事ですけれども、ルールを守れないことによって体感治安が悪化したり、あるいは、実際には治安は悪化していないとしても、体感治安はさまざまな形で悪くなる」と指摘。県南部の刑法犯認知件数自体は都心の半分程度の数値であるとしながらも「にもかかわらず、イメージだけが先行すると、ルールを守れない、難民として処理が遅れている方々に対して、不安がつのる、ということになる」と語った。
査証免除協定の一時停止については「ひとつの措置で直るとは思いません」と、今後も複合的な対応が必要と強調。「しかし、そういった積み重ねの中で、(現状の)さまざまな措置が結果として効果がないとすれば、入り口の部分、つまり査証免除の協定によって『短期滞在を前提とする場合には査証なしで入ってこれる』優遇的措置はいくつかの国がありますけど、トルコがその1つ。ところが、それが裏目に出ていて、短期滞在で入って、難民申請を行い、それを繰り返す、という人が、法務省の統計によると国籍別でトルコが一番多い。となれば、優遇的措置ではなく、他の国籍の方と同じように、査証を取って入ってきていただく」と結論づけた。
大野知事は「どの一つをとっても、全てが解決するとは思いませんけど、ひとつひとつステップをとってきていますので、そのうちの一つとして、今までの措置で体感治安が改善したとは言われていないので、だとすれば、新たな措置をお願いする、ということ」とあらためて説明。効果を疑問視する声に対しては「評価を頂いている方にとっても、総合的にご判断いただきたい」と主張した。
記者からは、この件に関連して、ヘイトスピーチ、差別を反対する人への誹謗中傷、殺害予告が相次いでいるとの指摘も出て、。差別禁止の条例制定などの意向も聞かれた。
大野知事は「ヘイトスピーチなどについては、法律で規制されている。直接的な罰則はございませんけど、そういった法律があります」と説明し、脅迫などは「刑法でしっかり対応して頂くものと考えている」とコメント。「外国人の方をターゲットにしているわけではなくて、ルールが守れない中で体感治安(が悪化しているとの声がある)。民族・国籍にかかわらず、ルールに従ってもらわなければいけないのは当然の話で、何人であっても厳しく対応していただくというのは変わりはない」と強調した。

