春のクラシックで思い出すのは“いぶし銀”菅原泰夫元騎手が春クラシック4冠を完全制覇した75年(昭50)。テスコガビーで桜花賞&オークス、カブラヤオーで皐月賞&ダービーをすべて逃げ切って制した伝説の春クラシックでした。

実家が木材店だった小学生時代、競馬好きの職人さんに囲まれて育った影響か、テレビといえば競馬、プロレス(馬場・猪木)、巨人戦(王・長嶋)、大相撲(北の湖、輪島、貴ノ花、魁傑)の順でした。テスコガビーが桜花賞で団子状態の21頭を突き放し、2着に1秒7の大差でゴールしたシーンは、テリー・ファンクVSブッチャーの流血戦、王貞治の756号本塁打にも負けない衝撃でした。杉本清アナの「後ろから何にも来ない」、「大楽勝」、「恐れ入りました」の実況ワードは今も鮮明に覚えています。

テスコガビーはオークスも8馬身差圧勝。カブラヤオーにいたっては皐月賞、ダービーともに超ハイペースで先行争いした末の2冠で“狂気の逃げ”と評された伝説のレース。9年前、定年を控えた菅原師に話をうかがった際、「あの2頭につながるチャンスを得たことが、俺の競馬人生の分岐点になった」としみじみ語っていました。

師の持論は「調教で自信を持って馬をつくっていれば競馬でも自信につながる。相撲取りが稽古、稽古でやっているのもそこなんだよ」とシンプルでした。75年の春2冠馬についても「癖をのみ込んで、付きっきりで調教をやった。テスコガビーはじゃじゃ馬だけど仕上げやすかった。逆にカブラヤオーは前の馬がしっぽを振っただけで逃げていくほど怖がりで、この欠点はかん口令を敷いて隠した。皐月賞とダービーでああいう乗り方(狂気の逃げ)をしたのもこれにつながるわけ」。時代時代で競馬のあり方も変わりますが、昭和の競馬には馬にも人にも泥臭いロマンがありました。

あれから約半世紀。今週の桜花賞もファンのド肝を抜くヒロイン誕生を心から願っています。“令和のテスコガビー”になりうる逸材は天性のスピード&オーラを秘めるリリージョワ。後続に影も踏ませぬ衝撃の大差逃げ切りに期待!