名伯楽の矢作芳人調教師が全面プロデュースする外厩施設「真狩サマーステーブル」および宿泊施設の「コテージ・エクリプス」のお披露目会が先月31日に行われた。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」では現地に取材へ行った井上力心(よしきよ)記者が、施設の様子や感じたことなどを伝えていく。

厩舎内で滞在中の管理馬の様子を確認する矢作師
厩舎内で滞在中の管理馬の様子を確認する矢作師

札幌から車で約2時間弱で真狩村に到着。道路の流れもスムーズで道のりは快適だった。豊かな緑に囲まれ、空気が澄み切った羊蹄山のふもとに外厩施設の「真狩サマーステーブル」、および宿泊施設の「コテージ・エクリプス」は設立された。

まず、外厩は2棟10馬房ずつ完備され函館、札幌競馬の開催中、レースを控える競走馬の短期放牧先として利用される。豊かな自然環境と良質な水で心身のリフレッシュを図るとともに札幌、函館間の中間拠点として輸送負担を軽減する役割も担っている。

矢作師は「数年前から函館、札幌間のリフレッシュ施設について考えていました。よく利用している浦河の牧場までは函館からだと約8時間かかる。ここなら(函館から)約3時間で済む。環境に恵まれているし、湧き水が出ていて軟水なのですごくいい。リフレッシュ効果を感じます」とメリットを実感する。取材時には管理馬であるワイワイレジェンド、ニコニコルンルンの2頭が入厩中だったが2頭とも馬房での元気な様子がうかがえた。

もう1つ大きなメリットは効率的な馬のやりくり。師は「競馬場の割り当て馬房には限りがある。有効に活用するためにも短い期間で競馬を使うのであればこの施設が1つのキーとしてプラスになると思う」と見込む。

コテージ「コントレイル」内にはコントレイル像や絵などが飾られている。
コテージ「コントレイル」内にはコントレイル像や絵などが飾られている。

宿泊施設「コテージ・エクリプス」は3棟あり、師が管理した名馬、コントレイル、リスグラシュー、ラヴズオンリーユーと名付けられた。「エクリプス」はラヴズオンリーユーが22年に日本調教馬で初となるエクリプス賞を受賞したことにちなんだもの。部屋の中は広々として居心地が良く、都会のざわつきがない非日常的な空間を味わうことができる。こちらは夏競馬のない10月~5月に一般向け宿泊施設として開放される。現在宿泊施設としての許可を申請中で早ければ今年の10月頃からの営業開始となる見込み。

真狩村の地域活性化に寄与するとともに、施設を軌道に乗せてさらなる成績向上を図る。トレーナーの枠を超えた矢作師の挑戦はまだまだ続く。

◆真狩(まっかり)村 「えぞ富士」と呼ばれ親しまれている羊蹄山の南ろくに位置し、農業を基幹産業として発展してきた純農村。主要な作物はじゃがいも、大根、人参など。食用ユリ根は全国一の出荷量を誇る。演歌歌手の細川たかしの出身地としても知られ、村を流れる真狩川河川公園に置かれた、熱唱する「細川たかし記念像」は観光スポットとなっている。最寄り駅はJR函館本線「倶知安駅」。最寄り高速ICは北海道縦断自動車道「洞爺湖温泉」。面積は114・25平方キロ。(真狩村HPを参照)


(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)