17歳の現役競走馬、あともう少し頑張ります! 高知競馬のマイネルバルビゾン(牡17)が7日の8Rで3着に奮闘した。単勝オッズ100倍を超える人気薄での力走。馬券に絡むのは1年2カ月ぶりのことだった。今回の「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」は、この現役最高齢馬について奥岡幹浩記者がリポート。孫のような年の差の馬を相手に、元気に走り続けられる秘訣(ひけつ)とは。そして引き際は-。“バル爺”を管理する那俄性(ながせ)哲也調教師(65)に話を聞いた。

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マイネルバルビゾン(高知県競馬組合提供)
マイネルバルビゾン(高知県競馬組合提供)

砂上に水が浮く不良馬場で、大ベテラン馬が力強く末脚を伸ばした。実況アナウンサーが驚きまじりに伝えた。

「3番手3番マイネルバルビゾン上がったか!」

国内現役最高齢、17歳のマイネルバルビゾンが、メンバー中上がり最速をマーク。単勝オッズ109・8倍の低評価を覆して3着に入った。

管理する那俄性調教師は、いつも元気な愛馬が、あの日はひときわ「気持ちが入っていた」と振り返る。

「装鞍所では、前脚で僕らのことを叩きにきたりして。阿部(基嗣)騎手と『お前はじじいのくせにいつまでも元気やのう。今日はとくに元気やのう』と言ってたら、本当に頑張りよった」

インターネットでは、敬意と親しみを込めて「バル爺」とも称される。そのニックネームは調教師も把握しているようで、「地元テレビ局の人に教えてもらった」と笑う。厩舎では“下の名前”でバルビゾンと呼ばれている。

通算278戦23勝。2歳9月に中央でデビューしたあと、佐賀、大井、岩手、浦和を経て高知へ。岩手時代には地元重賞を勝ち、南部杯(Jpn1)に出走したこともある。主な同期はゴールドシップ。父アグネスデジタル、母マイネポリーヌという血統で、11歳下の半妹フェアエールングは小倉牝馬Sを勝ち、昨秋に引退した。

マイネルバルビゾン(高知県競馬組合提供)
マイネルバルビゾン(高知県競馬組合提供)

この年齢でも現役を続けられている要因の1つに、衰えない闘争心がある。普段から元気はつらつ。そして厩舎スタッフによる、日頃の丁寧なケアも見逃せない。「南関東時代に脚を痛めて、もう競走馬としては無理と言われたそうなんです。でもオーナーにとっては最初の頃に購入した馬で、思い入れが深い。どうしても現役を続けさせたいとの希望があり、高知にやって来たんです。こっちでケアをしながら使ううちに、だんだん脚元が固まってきて」。高知転入初戦は8歳1月。このときすでにベテランの域に入っていたバルビゾンは、そこからさらに9年半走り続けてきた。年齢とともに成績は下降し、クラスも下がった。とはいえ、ただ出走するだけではなかった。11歳で通算23勝目を挙げると、16歳にして2着と連対。ファンを驚かせ、喜ばせた。

成績が下降しても、丈夫なうちはできる限り現役でいさせてあげたい。厩舎のそんな方針も大きい。トレーナーは「本当は馬をぼんぼん入れ替えたほうが、成績は上がるんですけどね」と笑う。騎手時代には、福山競馬史上最強馬とうたわれたローゼンホーマの主戦を務めた。調教師としては、全日本アラブグランプリの初代覇者ミスターカミサマを福山で育てた。いまは高知で腕を振るうホースマンはこう続ける。「走れるのならしっかり体を動かし、おいしくて栄養たっぷりのご飯を毎日食べる。そうすれば馬は、長いこと元気でおられるやろうし」。1頭1頭と真摯(しんし)に向き合い、大切に考えているからこそ、言葉に説得力と重みが増す。

年が明けて17歳になった今年1月1日には、ルーキー近藤翔月騎手との「同い年コンビ」で出走して話題になった。那俄性調教師は「17歳馬が、17歳のジョッキーを乗せてレースに出ることを目標にやってきた」と目を細める。次に目指すは、国内最高齢出走記録(19歳=ヒカルアヤノヒメ)か、それともサラブレッドの国内平地最多出走回数(409戦=セニョールベスト)か。「いや、いずれも目指すには遠すぎます」。長くともに過ごしてきたからこそ、冷静に見定める。

マイネルバルビゾン(高知県競馬組合提供)
マイネルバルビゾン(高知県競馬組合提供)

無事是名馬。その言葉を体現してきた1頭に、区切りとなるゴールが近づいている。トレーナーは、競走馬引退のプランを明かす。

「実は、あしずりダディー牧場(高知県土佐清水市)さんから『余生はうちで面倒を見たい』と声をかけてもらって。今年9月を最後に、現役を退くことになりそうです。いやね、もう頑張りすぎるほど頑張ってきたからね。あとは牧場で大事にしてもらって、長生きしてくれれば」

細く長い旅路の終着点へ。残り約3カ月。もう少しだけ、マイネルバルビゾンは走り続ける。若々しく、あふれるほど元気いっぱいに。【奥岡幹浩】(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)

◆マイネルバルビゾン ▷父アグネスデジタル▷母マイネポリーヌ(母の父スペシャルウィーク)▷牡17▷馬主 シグラップ・マネジメント▷調教師 那俄性哲也(高知)▷生産者 ビッグレッドファーム(北海道新冠町)▷戦績 通算278戦23勝▷総獲得賞金 3811万円▷主な勝ち鞍 岩鷲賞(岩手重賞)▷馬名の由来 冠名+絵画の一派

◆那俄性哲也(ながせ・てつや) 1960年(昭和35)11月14日生まれ。広島県出身。80年に福山競馬で騎手デビュー。福山史上最強馬と称されるローゼンホーマの主戦を務めるなど、重賞31勝をマーク。引退後は調教師に転身し、94年開業。ミスターカミサマやラピッドリーランなどの名馬を手がける。福山競馬廃止に伴い、13年より高知競馬へ。名牝ディアマルコなどを育てる。26年6月14日には通算1500勝を達成した。