今年のダービーでは武豊騎手が6勝目を挙げました。年齢は私が5歳上ですが、昔も今も「ユタカさん」と呼んでいます。やはりリスペクトがあるからです。

お互いにほぼ同じ時期に競馬サークルへ入りました。私が厩務員課程に在籍していた86年に、彼は競馬学校3年生でした。もちろんタケクニ(武邦彦)さんの息子とは知っていましたし、デビューすると瞬く間にスターになりました。

私が調教助手として初めてG1に出走したのがナリタハヤブサの皐月賞(90年=12着)で、鞍上はユタカさんでした。すでに「別次元の人」という実績で、すごく光栄でした。紳士的で礼儀正しく、人物的にもすばらしかったです。私はただただ舞い上がってばかりでしたが…(笑い)。

調教師になってからも本当にお世話になりました。G1もたくさん勝たせてもらいましたが、まず思い浮かぶのは迷惑をかけたレースです。特にブルーイレヴンは忘れられません。開業2年目に初めて重賞を勝たせてもらった一方で、京成杯では2コーナーから制御が利かず暴走してしまいました。レース後は「僕には乗れません」と言われてしまい、謝るしかなかったです。けがをさせずに済んだことだけが幸いでした。

あれだけの騎手ですから、乗ってもらいたいと同時に、彼に見合った馬なのかを考えなければなりません。敵に回すと本当に手ごわく、勝ちたいレースに必ず立ちはだかる存在でした。

私は50歳を過ぎてから馬に乗るにも体が動かなくなり、回復も遅くなりました。体を張る仕事で、53歳にしてトップレベルで戦えるのはすごいことです。今でも競馬へ向かう気持ちは誰にも負けてないと思いますし、だからこそチャレンジを続けられるのでしょう。

私が引退を公表した時に「本当ですか?」と真っ先に聞きにきてくれたのもユタカさんでした。競馬場で彼の方から近づいて声をかけてきたのを覚えています。頭が良く、人の機微が分かって、冗談もうまい。そのキャラクターも含めて、これからも伝説であり続ける存在だと思います。

◆角居厩舎と武豊騎手 JRA通算240戦62勝で、勝利数は騎手別で四位元騎手の66勝に次ぐ2位だった。勝率25.8%もルメール騎手の同28.5%に次ぐ2位(騎乗数20回以上)。重賞は15勝、うちG1はカネヒキリとウオッカで計5勝。地方ではカネヒキリでJpn12勝などの成績を挙げた。

武豊騎手×角居厩舎のJRA重賞制覇
武豊騎手×角居厩舎のJRA重賞制覇