<NHKマイルC>◇11日=東京◇G1◇芝1600メートル◇3歳牡牝◇出走18頭

戦前はどの馬が逃げるのか予想がつかず、流れは落ち着くとみていました。そもそも東京芝1600メートルはスタートから3コーナーまで540メートルほどあり、騎手も気持ちの上でゆっくり構えられる舞台です。ましてNHKマイルCはハイペースになることが少ないG1です。まさか、前半3ハロンが33秒4とは…。

スタート良くポンと出た馬が5、6頭いて、その馬たちが競り合うような形で激流となりました。2ハロン目が10秒4、3ハロン目が10秒7。これは速い。その先行集団に、1番人気アドマイヤズームも入ってしまいました。

ゲート裏の輪乗りで発汗が目立ち、イレ込み加減だったのは確かです。とはいえ、これまでのレースでは好位で折り合ってひと伸びする、大人びたレースをしてきた馬です。そんなズームでも、ああいう形になると行きたがる。落鉄もあったようですし、まだ3歳春ということでしょう。前に行けるというのは大きな武器ですし、メンタル面が成長すれば、また大舞台で活躍できると思います。

勝ったパンジャタワーもスタートは出ています。ですが、5、6頭が行った瞬間に、松山騎手が少し手綱を引いて、位置を下げました。あの判断が最大の勝因でしょう。ちょうど中団あたりで、自身は前半34秒ちょっとくらいの平均ペース。折り合いやすい流れになり、距離の不安も消えました。とはいえ、4コーナーは大外を回り、先頭まで差していますから、能力があったことも確か。われわれは近走に目を奪われがちですが、昨秋にG2京王杯2歳Sを勝った実績を軽視してはいけませんでした。

2着マジックサンズも鞍上の判断が光りました。道中は離れた後方2番手。武豊騎手にとっては何度も乗って、何度も勝ってきた府中マイルです。これは速すぎると確信していたと思います。それでも大外では間に合わない舞台。直線は内をついて上がり最速の脚を引き出す熟練の手綱でした。一方で、2年目・吉村騎手のランスオブカオスは先行集団から唯一粘って5着。将来が楽しみな人馬です。(JRA元調教師)

パンジャタワーでNHKマイルCを制した松山騎手はファンに手を振り引き揚げる(撮影・鈴木正人)
パンジャタワーでNHKマイルCを制した松山騎手はファンに手を振り引き揚げる(撮影・鈴木正人)