歴代最多5勝でもまだ足りない。レジェンド武豊騎手(53)が「第89回ダービー」(G1、芝2400メートル、29日=東京)で、9年ぶり6度目の制覇に挑む。今年は朝日杯FSの覇者ドウデュース(牡、友道)と参戦。左回りでさらなる豪脚の発揮が期待でき、1番人気で3着に敗れた皐月賞の雪辱へ自信をにじませた。

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第一人者は36年目の今なお貪欲だ。目指すは次なる金字塔。空前絶後のダービー5勝の実績に話題が及ぶと、武豊騎手はマスクの裏に笑いじわをつくった。

「5回では足りませんよ。20代、30代、40代で勝っている。やっぱり50代でも勝ちたい。勝つチャンスのある1頭。当然、楽しみ。僕が一番期待している。久しぶりにダービーのお立ち台に立ちたい」

今年のパートナーはドウデュースだ。昨年末の朝日杯FSでは自身2年ぶりのJRA・G1制覇を達成。「武豊は朝日杯を勝てない」というジンクスを22度目の挑戦で打ち破った。ただ、当時はホープフルSとの2択でマイルG1を選んだという。母ダストアンドダイヤモンズは米国でダート短距離の重賞を2勝。2400メートルに不安はないのか。

「そのへんは血統的にどうかと思っていたけど、2000メートルを2回走って、特に前回(皐月賞)は問題なく感じたし『2400メートルもいける』という手応えはあった。悔しかったけど、距離に不安がないのは分かったから。先入観を持ちすぎていたのかも」

地の利がある。左回りの府中だ。右回りの前走ではコーナーからゴールまで右手前のまま替えなかった。それでいて上がり33秒8は最速。東京なら525・9メートルの直線でさらなる末脚を発揮できる可能性もある。

「どちらかというと右手前で走る方が好きな馬。左回りなら(直線で)好きな右手前で走れる。そのへんはプラスに出ると思う。府中で勝った時(アイビーS)もいいレースができた」

勝利すれば最年長クラシック制覇記録(安藤勝己元騎手の51歳14日)を更新する。春先に指摘された際には「勝てたらうれしい」と答えた上で「誰の記録?」と“取材”するなど意欲をのぞかせていた。

恩人のためにも勝ちたい。自らの勧めもあって馬主となったキーファーズ松島正昭代表とは、今も公私で親交が深い。「いつも応援してくれているので一緒に勝てれば最高ですね」。思い描くのは9年ぶりの表彰台。6度目の登頂へ、尽きない向上心が53歳の肉体を突き動かす。【太田尚樹】

◆Mr.ダービー 武豊騎手の騎乗32回と5勝は歴代断トツだ。デビューした87年以降で騎乗しなかったのは87、92、10年だけ。10度目の挑戦となった98年スペシャルウィークで初制覇を果たすと、翌99年アドマイヤベガで史上初の連覇を達成。02年タニノギムレットで歴代単独最多(当時)の3勝目を挙げた。ちなみに、3連覇を狙った00年エアシャカールは、初制覇となった兄弟子・河内洋騎手(現調教師)のアグネスフライトに鼻差の2着だった。

■ドゥデュース迫力備わる

ドウデュースが前進を期す。大江助手は「徐々に迫力が備わってきている。前回の東京(4走前・アイビーS1着)は輸送もパフォーマンスも良かった。最後の直線を右手前で走れるので東京は合っている」と府中の舞台を歓迎。「前走は素晴らしい脚だった。G1のメンバーであれだけできるので能力は高い。ダービーでも十分に勝負できる」と皐月賞3着からの反撃に意気込んだ。