激動の2011年を締めくくったのはやはりこの人馬だった。武豊騎手(42)に導かれたスマートファルコン(牡6、小崎)がデッドヒートの末、ワンダーアキュートを鼻差退け連覇を達成。重賞8連勝、G1・5勝目を飾った。武は歴代単独最多となる同レース5勝目。来年3月31日のドバイワールドC(G1、AW2000メートル)へ向け、さらなる高みを目指す。
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ゴールの瞬間、競馬場が静まり返った。単勝100円元返しのスマートファルコンが、まさかの苦戦を強いられた。
ゴール前、ワンダーアキュートに詰め寄られ、最後は首の上げ下げ。3万2000人が固唾(かたず)をのんで写真判定を待った。「負けたと思った」。アキュートより先に引き揚げてきた武は、ファルコンを2着の枠場に誘導。神妙な面持ちで検量室に入ると、同時に関係者から勝ったことを告げられた。「良かったあ…」。その瞬間、始めて白い歯がこぼれた。
「競馬場が凍り付いているのが分かった」と武。ゴール後、向正面まで流した際に、いつも聞こえてくる歓声が耳に届いてこなかった。スタートはいつも通り馬なりでハナに立った。ところが、手綱から伝わる感触は少し違った。「自分が乗ってから初めて追っつけて走った。ずっと一生懸命走ってきて、疲れがあったのかもしれない」。ワンダーアキュート、テスタマッタにマークされながら走る展開は予想外。それでもファルコンは、底力でダートグレードレース最多の18勝目をもぎとった。
最強パートナーにあらためて敬服した武は「今年は成績を挙げられなかった。来年はこの馬とドバイに行きたいという大きな目標があるし、僕自身もっともっと頑張らないといけない」と来年を見据える。中央G1連勝記録が途絶え、頑張った自分への褒美として購入する時計のコレクションも、しばらく増えていない。2011年を勝利で終えられたことに感謝しながら、何度も「もっと頑張らないと」という言葉を口にした。
いつものようにスマートではなく、どちらかと言えば泥くさい勝利。だが、武が「大きな鼻差だった」と言う通り、国際G1へ昇格した大賞典を勝てた意義は大きい。来年はいよいよドバイへ。小崎師は「ファルコンには頭が下がる。ドバイへはもちろん連れて行きたいが、今日がこういう勝ち方だったからオーナーや豊くんとも話しながら慎重に決めたい」。辛勝に気を引き締めるが、上を目指す気持ちは変わらない。大きな夢へと向かう人馬から来年も目が離せない。【和田美保】
◆スマートファルコン ▽父 ゴールドアリュール▽母 ケイシュウハーブ(ミシシッピアン)▽牡6▽馬主 大川徹▽調教師 小崎憲(栗東)▽生産者 岡田スタッド(北海道新ひだか町)▽戦績32戦22勝▽総収得賞金 9億3073万6000円▽主な勝ち鞍 08年白山大賞典(統一G3)浦和記念(統一G2)兵庫ゴールドトロフィー(統一G3)、09年佐賀記念(統一G3)名古屋大賞典(統一G3)かきつばた記念(統一G3)さきたま杯(統一G3)ブリーダーズゴールドカップ(統一G2)、10年かきつばた記念(統一G3)さきたま杯(統一G3)JBCクラシック(統一G1)浦和記念(統一G2)東京大賞典(統一G1)、11年ダイオライト記念(統一G2)帝王賞(統一G1)、日本テレビ盃(統一G2)JBCクラシック(統一G1)
(2011年12月30日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時

