1番人気のタップダンスシチー(牡7、栗東・佐々木晶)が完勝した。逃げるローエングリンを3角手前でとらえ先頭に立ち、直線では追走馬たちを力でねじ伏せた。堂々の横綱相撲を見せ、2分11秒1のタイムで優勝。昨年のジャパンCに続くG1・2勝目。佐藤哲三騎手(33)、佐々木晶三師(48)にとっては、ともにうれしいG1・3勝目になった。日本の現役馬最強の称号を手に入れた同馬は、今後は当初の予定通り、世界最高峰のフランスのG1、凱旋門賞(芝2400メートル=10月3日)に挑戦する。

   ◇   ◇   ◇

佐藤哲騎手がヘルメットを脱いだ。ステッキとともに、そのままスタンドに投げ入れる。派手なパフォーマンスに、6万人の観衆がどよめいた。最高の気分だった。思い通りの競馬で、タップダンスシチーの力を十二分に引き出した。検量室前では馬の背に乗ったまま、佐々木晶師とハイタッチ。「びっくりするくらいすごい馬。スーパーホースです」。笑顔がはじけた。

仕掛けは早かった。スローに落としたローエングリンを、3角手前でとらえた。残り800メートルでの早すぎる仕掛け。「内心はやってもうたかなぁ、という気持ちがあった」と佐藤哲は苦笑しながら、振り返る。だが佐々木晶師はその瞬間、調教師席で騎手の騎乗ぶりに感心していた。「ローエングリンがスローに落としたときに、まずいと思った。ここで行けと思ったら、本当に哲ちゃんが行った。完全のタップを手の内に入れている」。

直線に入っても、追走馬たちを退けた。1度先頭に立ったら、もうその場所を他馬には譲らない。2着に2馬身差をつけてゴールに飛び込んだ。「3角でガツンとハミを取った。無理に手綱を引っ張ったらバランスを崩すだけ。タップの力を信じていた」と佐藤哲は会心のレースを語った。

7歳馬以上の宝塚記念制覇は、70年のスピードシンボリ(7歳)以来34年ぶり2回目。ベテランの部類に入る同馬が、現役最強の称号を手に入れた。佐々木晶師は「昨年のメンバーの方が強かったし、今日はどんな競馬になっても勝てると思っていた。今の時点では4歳馬に負けない自信があった」と胸を張った。馬はまだまだ年齢以上に若い。「10歳まで現役で行けそう」と冗談交じりに話した佐々木晶師だが、半分は本心でそう思っていた。

30日に北海道浦河町の日進牧場に放牧に出される。次の目標は世界。フランスの凱旋門賞だ。「まだ現実感がない。馬場のことなど僕が勉強しないといけませんね」と佐藤哲は少し緊張した様子で話した。これまで凱旋門賞には5頭の日本馬が挑戦し、99年にエルコンドルパサーが2着に入った以外は、いずれも2ケタ着順に敗れている。タップダンスシチーはこの春のG1馬では、最も高齢の7歳馬。そのベテラン馬がこの秋、日本を背負って、世界の舞台に躍り出る。【中西典章】

◆タップダンスシチー ▽父 プレズントタップ▽母 オールダンス(ノーザンダンサー)▽牡7▽馬主 (株)友駿ホースクラブ▽調教師 佐々木晶三(栗東)▽生産地 米国▽戦歴 35戦11勝▽総取得賞金 9億4655万5000円▽主な勝ちクラ 02年朝日CC(G3)、03、04年金鯱賞(G2)、03年京都大賞典(G2)、03年ジャパンC(G1)

(2004年6月28日付 日刊スポーツ紙面から)※表記は当時