世界最強馬の電撃引退が発表された。ジャパンC優勝でG1・6連勝を決めたイクイノックス(牡4、木村)が現役生活を終えることが30日、同馬を所有する(有)シルクレーシングの米本昌史代表から発表された。ジャパンC直後には有馬記念参戦などを含めて、米本代表は「しっかり検討したいです」とあらゆる可能性を検討するとしていたが、種牡馬として後世にその血を受け継いでいく道が選ばれた。

ジャパンC後にノーザンファーム天栄に移動。脚元などには異常はないものの、再び中3週で行われる有馬記念に向けて万全の状態に調整するのは難しいと判断された。けい養先は社台スタリオンステーションになる。

同馬は父キタサンブラックの初年度産駒として21年8月に新潟芝1800メートルでデビュー。新馬戦を6馬身差の圧勝で飾ると、次戦の東京スポーツ杯2歳Sで重賞初制覇を成し遂げた。明け3歳初戦に選んだ皐月賞、続くダービーの春2冠で2着に入り、世代屈指の素質をわずか4戦で示した。

快進撃は3歳秋に始まった。天皇賞・秋でパンサラッサの大逃げを上がり3ハロン32秒7の末脚でぶち抜くと、有馬記念も制し、22年の年度代表馬に選出された。今年に入ってからは3月のドバイシーマCの逃げ切りで世界最高レーティングとなる129ポンドの評価を獲得する。帰国初戦の宝塚記念も勝ち、秋には令和初の天覧競馬となった天皇賞・秋を1分55秒2のレコードで駆け抜け、史上3頭目の同レース連覇を達成した。

そして、ラストランとなったジャパンCは3冠牝馬リバティアイランド以下を下して歴代最多タイとなるG1・6連勝を達成。1着賞金5億円を獲得し、総獲得賞金(ボーナス、褒賞金は含まない)は初めて20億円を突破。22億1544万6100円(うち海外4億5889万100円)で歴代最高額を更新した。脚質は実に多彩で、逃げでも追い込みでもG1を制覇。この秋2戦はどちらも正攻法の3番手抜け出しでの圧勝で、ペースや相手を問わない万能型でもあった。この日JRAから発表されたジャパンCのレーティングは133ポンド。現役ラストランは世界最強を示すに十分すぎるほどのパフォーマンスだったことが証明された。

同馬は来年に種牡馬としてのセカンドキャリアをスタートさせ、初年度産駒は25年に誕生する予定。イクイノックスの子どもたちがターフをにぎやかすのは、27年夏以降となる。

◆イクイノックス▽父 キタサンブラック▽母 シャトーブランシュ(キングヘイロー)▽牡4▽馬主 (有)シルクレーシング▽調教師 木村哲也(美浦)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 10戦8勝(うち海外1戦1勝)▽総収得賞金 22億1544万6100円(うち海外4億5889万100円)▽主な勝ち鞍 21年東京スポーツ杯2歳S(G2)、22年天皇賞・秋(G1)有馬記念(G1)、23年ドバイシーマC(G1)宝塚記念(G1)天皇賞・秋(G1)ジャパンC(G1)▽馬名の由来 昼と夜の長さがほぼ等しくなる時