8月27日から9月1日にかけて、第40回アジア競馬会議(ARC)が行われた。
8月27日に開会式が行われ、同28日からの3日間のビジネスセッションでは、主に9つのテーマが語られた。今回のARCのスローガンは「Be Connected, Stride Together(つながろう、ともに歩もう)」。08年以来、16年ぶりの日本開催は初めて札幌が開催地に選ばれた。北海道は国内の約98%の競走馬が生産される馬産地。人と馬のつながりを軸に、議論が展開された。全ての講演に出席した松田直樹記者がARCで聞いたこと、感じたことをリポートする。(全10回)
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各国は競馬の認知度向上にも力を入れながら、資金獲得への障害物撤去にも力を入れねばならない時期を迎えている。ビジネスセッション2日目の8月29日は違法賭事、公正確保に軸足を置いて議論が展開された。
この日最初のビジネスセッションは「賭事の未来」。競馬とスポーツベッティングの未来に対する予測、賭事分野における動向、ワールドプールが持つ可能性、ファンエンゲージメントを高めるデジタル化が主題となった。
香港ジョッキークラブ(HKJC)のエグゼクティブディレクターである、マイケル・フィッツサイモンズ氏はシンデレラの物語を引用しつつ、競馬が持つストーリー性を説いた。07年にアジア競馬連盟(ARF)が設立され、19年にはワールドプールの運用がスタート。ワールドプールは現在、31団体で構成され、世界の大レースの馬券を横断的に購入することができる。21年にはHKJCは3048億香港ドルの売り上げを記録した。
この頃がシンデレラの話中における、着飾った彼女が王子様と舞踏会で出会ったシーンだとされた。その後、深夜12時を過ぎ、シンデレラはまた元の生活へ。売り上げは減少傾向となり、マカオ、シンガポールの競馬が廃止に向かったように、きらびやかな時期が長く続かないことを懸念していた。
それゆえに、“ガラスの靴”になり得るのがワールドプールだとされた。爆発的に売り上げが増え、今や当初の設立当初から4倍超の数字をたたき出している。例えば英国の競馬開催。ひと開催につき、約50~70万ポンドの手数料収入があり、その数字はブックメーカーから入る金額の約10倍だという。
前日28日で講演を行ったレーシング・ニューサウスウェールズ州のピーター・ブランディーズ氏はHKJCのワールドプールは「世界を救う」とまで言った。世界中のレースにスポットライトを当てることで、世界の人々が馬券に参加できるため、流動性が高まるとの希望を持っていた。業界を細分化せず、1本の糸を束ねて太いひも(市場)を作り上げるようなイメージを抱いた。
個人的な感想だが、講演中のワールドプールのアピールが強すぎて、日本も参加を促されているようにも感じた。日本はコロナ後も売り上げを伸ばし、ファンエンゲージメントも高く、産業の基盤がしっかりとしている。馬券売り上げが賞金に反映され、馬主や生産者、ファンへと循環するサイクルが確立されている。公営であることなどの構造上の仕組みが、そう簡単に変わるとは思えない。それだけ馬券売り上げ世界1位のマーケットは魅力なのだろうが…。
■アジア競馬会議(Asian Racing Conference)
アジア諸国間の親善と相互理解の促進、および加盟国間の競馬交流を目的として、日本の提唱により創設された国際会議。第1回は1960年に東京で開催。今回は08年以来、16年ぶりの日本開催。過去4回は全て東京で議論が交わされ、今回は初の札幌開催となった。40の国と地域、団体から約800人の競馬関係者が出席した。

