JRA最年長の大ベテラン、柴田善臣騎手(58=フリー)がクラシック最終戦の菊花賞(G1、芝3000メートル、20日=京都)にデビューから4戦すべてで手綱を取る上がり馬ピースワンデュック(牡、大竹)で挑む。自身はデビュー40年目で初のクラシック制覇がかかる一戦。愛犬、家族、そして、引き際まで、その胸中に迫った。
◇ ◇ ◇
ピースワンデュックの1週前追い切りを終えた柴田善騎手の表情は明るかった。ラストは気合をつけ俊敏な反応で鋭く伸びた。「付くべきところに筋肉が付いてまたパワーアップしている。動きがシャープになっているし反応もすごくいい。状態はすごくいい」と抜群の感触を伝えた。
パートナーはデビューからコンビを組み、現在3連勝中の上がり馬。調教、レースで密にコンタクトを取りながら成長を促してきた。「完成はまだまだ先。もっと良くなる馬だよ。こういう馬との出会いがあるから辞められないよね。近くにいるのに息遣いが聞こえてこないんだ。スタミナは問題ない」とタフな淀3000メートルの適性も見込む。
家では2匹のワンちゃん中心の生活を送る。家族の存在、愛犬、亀、夫人がゆとりと癒やしをもたらし、公私とも充実。心の支えになっている。とにかく今は馬乗り、レースに乗ることが楽しくて仕方がない。「仕事でも周りの人に支えられてわがままを聞いてもらってジョッキーを続けられている。本当に幸せな人生を送らせてもらっているよ。辞める気持ちもあるけど、やっぱ、もうちょい楽しませてって。ファンの方々にもどうか温かい目で見てほしい」。まだまだこの恵まれた環境で目いっぱい楽しんで仕事がしたい。鞍上から「引退」の2文字がちらつくことはない。
久々にG1の大舞台に帰ってきた。菊花賞は17年以来7年ぶり、G1騎乗は21年ジャパンC以来約3年ぶりの参戦となる。「続けてG1まで乗せてもらえて本当にありがたいよね。また、ノリ(横山典)やユタカ(武豊)とG1に乗れるのは懐かしくて何かホッとする。彼らのことはうらやましいよね。乗るのがすごく楽しみ」。若い頃に切磋琢磨(せっさたくま)していたライバルたちとのビッグレースでの再会に胸を弾ませる。
大切にしているのは馬の気持ちに最大限寄り添うこと。その感覚はキャリアを重ねて養ってきた。「やっぱり馬を分かってあげて馬にも楽しんで走ってもらわないとね。今の目標? 気持ちの整理が付いて気持ち良く引退することかな」。すがすがしくステッキを置くため、成し遂げたいことはたくさんあると言う。デビュー40年目にして悲願のクラシック初Vへ。JRA最年長58歳の名手、ヨシトミさんは久々の菊の舞台を思う存分に楽しむつもりだ。【井上力心】

