阪神佐藤輝明内野手(21)は豪快な打撃が注目されるが、走塁技術にも非凡なセンスを感じた。

9日の日本ハム戦の中継を見たが、初回の第1打席で右前打を放ち、4番大山の打席でカウント3-1から二盗を仕掛けた。初対戦の投手でクセも分かりにくいはずだが、最高のスタート。ファウルにならなければ悠々セーフの印象を受けた。

二塁走者になった時の第2リードも抜群だった。投手がモーションに入った時に2、3歩行うサイドステップのことで、両足が少し空中に浮いた形で打者のインパクトを迎えるのが理想だ。着地した時に三塁に進むのか、二塁に戻るのか、瞬時に対応できる。佐藤輝はこの“打った瞬間の待ち方”が最高で、糸原の中前打で全くロスのない好スタートを切り、悠々生還した。

走塁技術は教えられても簡単に補えるものではなく、持って生まれた本能的なもの、センスによるところも大きい。だがその0コンマ何秒の動き、状況判断がアウト、セーフに直結し、三塁で止まるか、本塁にかえれるかの分岐点になる。打つだけではない魅力を感じずにはいられなかった。

もちろん打撃はあれだけ飛距離を出せ、広角に打てるのは類いまれだ。1つ課題を指摘するなら、速い真っすぐに差し込まれる傾向があることだろう。右足を早く上げる分、棒立ちのような形になり、振り出しが遅れている。タイミングの取り方を改良していくことが当面の修正点になる。

余談だが、ソフトバンクのヘッドコーチ時代の11年、王球団会長のひと言で、1年目の柳田を5月に1軍に上げることになった。飛距離は爆発的だが、バットが無駄に動いて、ひどいアッパースイング。藤井、藤本、私の3コーチでバットの出し方を特訓したことを思い出す。佐藤輝は柳田と比べられることが多いが、スイングには無駄な動きがなく、同じ大卒で入団当初の柳田より完成度は高い。スケールが大きい、本当に楽しみな選手が出てきた。(日刊スポーツ評論家)

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阪神対日本ハム 5回裏阪神無死一塁、佐藤輝は右越え逆転2点本塁打を放つ(撮影・前田充)
阪神対日本ハム 5回裏阪神無死一塁、佐藤輝は右越え逆転2点本塁打を放つ(撮影・前田充)