阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22=近大)が3試合連続の6号ソロ本塁打を放った。

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佐藤輝はパワーだけでなく、テクニックも備えているところを見せた。本塁打を放った2回の打席。初球は変化球が高めに浮き、ボール。2球目はストレート狙いだったが、落ちる球に空振り。西武の今井とは初対戦だったが、3球の外角高め150キロをとらえた。ここも真っすぐ狙いだが、少し差し込まれそうな感覚が自分の中であったと思う。そこでスイングの途中で振りを変えたと思う。振り出しからスイングの遅れをカバーしようと、途中で脇を締めてコンパクトに振った。これは高度な技術ではあるが、私はそう推測する。カウント的には強く振ってもおかしくない状況だが、コンパクトに振り抜いた印象があるのはそういうことだろう。

前日16日のヤクルト戦では、3ボールから内角高めをスタンドに運んだ。あのコースはファウルにするバッターが多いが、佐藤輝はボールを内側からとらえており、ファウルゾーンに切れない打撃ができている。これも高い技術力の証明だ。この日はスイングの途中でもアジャストできることを見せた。今後はインコースの強い球に詰まる可能性はあるが、これも慣れだ。経験を積めば、対応できるだろう。本塁打をどの方向にも打ち分けられるのは、強みだ。

私は昨年オフに得点力向上のポイントの1つに、速い直球や甘いボールの打ち損じが多いことを指摘した。このオープン戦では、本塁打や打率の面で攻撃力のアップが光っている。それは「準備」ができているからだろう。1、2回の攻撃を見ていると、初球へのアプローチが良かった。先頭打者の近本は152キロ直球をとらえて、右中間を破った。大山は四球で出塁した後に初球に盗塁。2回にも梅野が初球に三盗を決めた。特に梅野の走塁は、宿舎で対戦相手の投球を分析していたのか、あるいは初回の近本の走塁を観察してイメージを膨らませていたのか、そういう準備がなければ、できないものだ。大技だけでなく、そういう細かい野球もやろうとしている。

今回の関東遠征は開幕戦を想定したオーダーだろうが、ベンチスタートの糸井を代打の切り札で使える。8番を四球で歩かせて投手に打順が回ってくるところに、糸井が代打で登場すれば、相手投手も嫌だろう。佐藤輝が1人加入しただけで、選手層は確実に厚みを増したと言える。(日刊スポーツ評論家)

2回表阪神無死、右越えに6号本塁打を放ち、驚く西武山川(左)を横目にダイヤモンドを回る佐藤輝(撮影・菅敏)
2回表阪神無死、右越えに6号本塁打を放ち、驚く西武山川(左)を横目にダイヤモンドを回る佐藤輝(撮影・菅敏)