この試合のポイントとして見逃せないのが、2番北條だ。初回に近本が安打で出塁した。バントもあると思ったが、そぶりもなく、ベンチはノーサインで打たせた。カウント次第ではエンドランを仕掛けたかもしれないが、北條は2球目のストレートを一振りでとらえ、先制した。続くマルテが進塁打を放ち、大山が2点目のタイムリー。流れるような攻撃で試合の主導権を握った。

ソフトバンク石川が先発ということで、中野を2番に置く選択肢もあるが、矢野監督は打撃のいい北條を信頼して、オリックス戦から引き続き起用した。監督というのは、オーダーを組む時にシミュレーションをする。相手は開幕投手を務めた石川でロースコアのゲームを想定した中で、まず先制したい。近本が出塁したときに、バントかエンドランを仕掛けるのか、いろいろな作戦を練る。今回、矢野監督は北條に打たせると決め、本人にも伝えたはずだ。近本が出塁してから考えていては後手に回る。そういう意味で、2番北條はキーポイントで、その采配が当たり、非常にいい流れをつくった。

序盤の4得点で、青柳は楽に投げられた。さらにいえば、中継ぎ陣の台所事情が苦しい状況で、藤浪を登板させられたのは大きい。リリーフ陣も休ませることができた。矢野監督にとっては、納得できるゲームだろう。

交流戦に入り、勝ち負けを繰り返しているが、これをどうとらえるか。長いシーズン、勝ち続けることはできない。優勝する条件として、チームの状態が悪い時期に大きな連敗をしてはいけない。今は連勝もないが、連敗もない。終盤にバントで送れないことや守備のミス、中継ぎ陣の疲労など負けの原因は明確だ。分かっていれば、修正に取り組める。その一方で、長打力や機動力があり、先発陣は試合を壊していない。スアレスが打たれたわけでもない。私から見れば、順調にここまできている。状態が上がってくれば、大型連勝もあるだろう。(日刊スポーツ評論家)

阪神対ソフトバンク 9回1イニングを無失点に抑え力強くガッツポーズする藤浪(撮影・上田博志)
阪神対ソフトバンク 9回1イニングを無失点に抑え力強くガッツポーズする藤浪(撮影・上田博志)