大混戦のセ・リーグで、巨人が1歩だけ抜け出したような気がする。まだゲーム差はないが、不振を極めていたエース菅野が復調気配。「たまたまいいピッチングをした」というのではなく、しっかりとした“根拠”を見せた投球だった。
投球練習を見て、いつものフォームと違っていた。今季はトップの位置にボールを持つ手が上がる前に上半身が突っ込み、左肩の開きが早かった。そのため、どうしても腕が振り遅れてしまい、真っすぐがシュート回転。勝ち運にも見放され、焦りもあったのだろう。腕の振り遅れを上半身の力で取り戻そうとするから、ボールは抜けてしまっていた。しかし、今試合でのフォームは力みが抜け、腕の振り遅れも修正できていた。
こうなると、持ち前の変化球が生きてくる。立ち上がりはまだ、真っすぐが引っかけ気味だったが、菅野のようなカットボールやスライダーが武器の投手は、シュート回転するよりはるかにいい。軸になるカットボールと真っすぐとの見極めが難しくなり、実戦的なピッチングが可能になる。左打者の内角と右打者の外角にはカットボール。そして右打者の内角にはツーシームを投げ分け、ストライクゾーンを広く使えていた。
8回を投げて打たれたヒットは塩見のボテボテの三塁への内野安打だけ。今季は真っすぐが思うように制球できず、手痛い長打で失点するケースが多かったが、球数も8イニングで108球。特に6回以降はこつをつかんだように球数も少なくなった。力んで投げていないから、疲労の蓄積も軽減するだろう。そして何よりエースが安定感のあるピッチングを見せれば、ブルペンで肩を作る中継ぎ投手の負担も出番も減ってくる。
シーズン終盤で優勝を争うチームとの直接対決では、「エース対決」が多くなる。この試合でのヤクルト高橋のピッチングも見事だったが、こういう僅差の試合を菅野で制するようになれば、巨人が有利。久しぶりの「快投」で「もう大丈夫」とまで断言はできないが、次回のピッチングでもそれなりの投球ができそうな予感は十分に感じさせた。(日刊スポーツ評論家)




