試合のポイントとして、阪神西勇が鈴木誠を中心とした活発な広島打線をいかに抑えるか、に注目していた。特に印象に残ったのは、西勇が今まで以上に細心の注意を払って、1球1球丁寧に集中して投げている点にある。

両サイドに変化球を含めて、出し入れして、低めに投げるのが彼の持ち味だが、この日は打者のベルトより上の胸元への強い球が効果的だった。すべての打者にそうだったのではなく、鈴木誠や西川といったポイントになる場面で意識して投げていた。そうすることで打者は容易に踏み込めなくなる。鈴木誠は甘い球を打ち損じる場面もあった。梅野と試合前に入念に打ち合わせをしたのだろう。投球の狙いが明確だったため、ほとんどサインに首を振らなかった。バッテリーの配球に工夫が見られた試合だった。

これまでも試合をつくっていないわけではなく、エラーが出るなどかみ合わせもあった。100勝という節目で足踏みして、本人も周りも気にせざるを得ない状況が続いたが、これが復調のきっかけになる。また6回のチャンスを勝負どころと判断して、まだ投げられた西勇に代打を送った矢野監督の采配も光った。6回裏のピンチで糸原が好守で併殺を取ったのも大きなポイントとなった。

2軍で再調整となった佐藤輝に関しては、監督としては当たり前の判断をした。35打席ノーヒットで、チームに貢献できていない。 何のためにベンチに置いておくのか。チームは優勝するために戦っている。今は佐藤輝も頭が整理できていない状態だ。守備固めで置いておくこともあるかもしれないが、それではチームのためにも、本人のためにもならない。優勝の輪に加わりたかったら、ファームでもがいて、はいあがったらいい。それがプロの世界。(日刊スポーツ評論家)

広島対阪神 100勝のボードを掲げる西勇輝(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 100勝のボードを掲げる西勇輝(撮影・加藤孝規)