立ち上がりの藤浪を見て、「あれっ」と首をかしげた。2回無失点でボールの質、投球内容ともに良かった前回2月27日ヤクルト戦と比べて、手が下がって見えたからだ。腕の振りが縦振りではなく横振りになる。これは悪い時の傾向でもある。この日は球数100のうち、3割程度もスライダーやカットボールに費やしていた。「曲げよう、曲げよう」とイメージするうちに、無意識に腕が横振りになってしまったのではないだろうか。

バッテリーを組んだ坂本の考えはもちろん理解できる。的を絞らせないように直球一辺倒の配球を避けた結果、横曲がりの変化球がかさんだのだろう。ただ、もし自分がアドバイスさせてもらえるならば、横振りになるクセが出た際は「スライダーではなくフォークを使ったらどうか」と進言する。フォークのような縦の変化を意識させれば、腕の振りは自然と縦に戻っていくものだ。

藤浪の起用法は首脳陣にとっても悩みどころだろう。前回まで素晴らしかったのに、この日は心配な内容。好投が長く続かないとなると、残念ながら、まだフォームを完全に自分のモノにはできていないのかもしれない。とはいえ、ローテを任される投手が「良い時は好投、悪い時は炎上」では困る。腕が横振りになり始めたマウンドでも、フォークを活用するなどして、すぐに修正を図れるレベルに持っていってほしい。

日程を逆算すれば現状、藤浪は開幕2戦目での先発が予想される。開幕投手を大本命の青柳だと仮定すれば、苦手意識を持つ打者も少なくない青柳→藤浪の並びはヤクルト打線にとって厄介に違いない。相手が嫌がる選択をしていくのも、シーズンを戦い抜く上で大事な要素の1つ。もう腹をくくらなければいけない時期でもあるし、藤浪にはぜひとも次回登板で首脳陣を安心させてほしい。(日刊スポーツ評論家)