阪神がDeNAに完封勝ちし、CSファーストステージ突破に王手をかけた。打線は5回、3番近本光司外野手(27)が中前に決勝2点打。投手陣は先発青柳晃洋投手(28)が6回無失点と好投した後、8回2死一、二塁から登板した湯浅京己投手(23)が1回1/3を無失点で“プロ初セーブ”を記録。日刊スポーツ評論家の中西清起氏(60)は矢野燿大監督(53)の積極采配を勝因にあげた。【聞き手=佐井陽介】

   ◇   ◇   ◇

泣いても笑っても今季限りで退任するからだろうか。矢野監督はいよいよ吹っ切れたように映った。CSのような超短期決戦では「もうちょっと様子を見てから」と決断が遅れると、後手後手に回ってしまうもの。そういう観点で見れば、この日はレギュラーシーズンと比べても、先手先手で積極的な采配が際立った。

印象的だったシーンがある。0-0で迎えた5回1死一、二塁、2番糸原に迷わず代打マルテを送った場面だ。糸原の2打席凡退の内容を鑑みての判断だったのだろうが、レギュラーシーズンではなかなか見られなかった采配にキレ味を感じたのは私だけではなかったはずだ。結果、マルテは四球で1死満塁に好機を広げた。首脳陣の決断力が3番近本の先制打を呼び込んだと表現しても大げさではない。

継投の役割変更にも、今までにない思いきりを感じた。私も投手コーチ時代の14年CSファーストステージで、当時守護神だった呉昇桓を3イニング投げさせた経験がある。とはいえ、プロ通算0セーブのセットアッパー湯浅を大舞台で守護神に抜てきすることまではさすがに想像できなかった。さらに言えば、代え時も申し分なかったのではないだろうか。8回2死一、二塁からのイニングまたぎは、この日に限ればやむを得なかったと考える。

守護神候補の1人だったケラーは調子を落としている。首脳陣は長打が怖い4番牧に湯浅をぶつけたかったのだろう。8回に投入した岩崎は、自身の悪送球と四球で一、二塁とした時点で苦境に立たされていた。4番牧を迎えた場面で湯浅にスイッチした決断は最善策に映ったし、期待に応えた湯浅は誰よりもたたえられるべきだ。個人的には、「守護神湯浅」は来季への置き土産になるかもしれないとさえ感じた。

重箱の隅をつつけば、終盤には痛いミスもあった。佐藤輝は8回1死三塁で犠飛も決められなかったし、岩崎の投ゴロ悪送球にも驚いた。それでも超短期決戦の初戦をモノにできた事実は何より大きい。代打、代走、守備固めと積極的に動いた末の勝利。選手、首脳陣ともに勢いに乗れそうだ。(日刊スポーツ評論家)

DeNA対阪神 5回表阪神1死一、二塁、四球を選ぶ代打マルテ(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 5回表阪神1死一、二塁、四球を選ぶ代打マルテ(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 8回裏DeNA2死一、二塁、湯浅は牧を三振に仕留めガッツポーズを見せる(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 8回裏DeNA2死一、二塁、湯浅は牧を三振に仕留めガッツポーズを見せる(撮影・加藤哉)