「2022 JERA クライマックスシリーズ セ」のファイナルステージが開幕し、阪神はヤクルトとの初戦に完敗した。先発西勇輝投手(31)が持ち味を発揮できず、4回5失点で降板。ヤクルトに1勝分のアドバンテージがあるため、「2敗」となった。だが、日刊スポーツ評論家で広島3連覇監督の緒方孝市氏(53)は、リーグ屈指の投手陣が攻めの投球を見せれば、流れは変わると解説した。【聞き手=田口真一郎】

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今回のファイナルステージは、チーム防御率リーグ1位の阪神がNO・1の得点力を誇るヤクルト打線をいかに最少失点に抑えて勝ちきるか。それが最大のポイントになる。リーグ優勝したチームにとって、ファイナル初戦というのは、試合前からものすごく重圧がかかるもの。それだけに先制点を奪い、試合の主導権を握るというのは、両軍にとって重要なことだった。それを考えれば、先発の西勇が本来の投球をできなかったことで、阪神側には重苦しい展開になった。

この日の西勇は左打者に対しては、カットボールなどで内角を突くことができていたが、右打者には武器のひとつであるシュート系の球を投げ切れていなかった。打者の体勢を起こしたり、足元をズラす投球があってこそ、外角のスライダーやカットボールが生きる。右打者というのは、シュート系のボールが嫌なものだ。早いカウントで見せられると、意識して踏み込みが甘くなる。それが内を投げきれず、意識させることができなかった。両サイドを使えなかったことが敗因と言えるだろう。球場が狭いだけに、外角一辺倒では1発を浴びる可能性もある。打たせて取るとはいえ、攻めの投球を見せる必要があった。

阪神は、アドバンテージにより、「2敗」の形になった。しかし2戦目以降を戦う上で、それは関係ない。短期決戦というのは、ひとつの勝ちで流れが変わることがある。重要なのは、今年やってきた戦いを次にできるかどうかだ。投手力で勝ち上がったチームだけに、いかに最少失点に抑えるか。打線がコツコツと機動力を生かしながら、相手よりも1点上回る攻撃ができるか。短期決戦だからといって、違う戦い方はできない。ヤクルトは、村上1人を抑えればいいという打線ではない。打線全体で長打力があり、つなぎもでき、機動力を駆使できる。いろんな戦術をとれるチームだ。それだけに、あらためて強い意識を持って、攻めの投球をしなければならない。自分たちの戦い方ができれば、流れは変えられる。