鋭いスライダーで記憶に残るリリーバー、内竜也投手(35)がロッテ投手としての17年間のキャリアを終えた。慣れ親しんだ背番号21を脱いでの、今の思いを聞いた。今回は後編。【金子真仁】
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パソコンの奥底に忘れられない1枚が眠る。03年7月20日、高校野球夏の神奈川大会の初戦。川崎工ナインが平塚球場の外で試合前のランニングを始めた。プロ注目右腕の内にファインダーを向けた。するとまさかの、カメラ目線での笑顔。数時間後に10球団28人のスカウトの前で快投を演じ、ドラフト指名を決定づけた。試合後はまたニコニコしていた。
内の周りには、穏やかで平和な時間が流れる。自然と人が集まる。ロッテでもそうだった。何年か前の、石垣島キャンプ。休日の気晴らし用にゲーム機を持って行った。後輩が遊びに来た。でもコントローラーは1つしかない。対戦できない。「じゃ、中古のを買ってきてよ」。タクシー代と合わせてお金を渡した。後輩が戦利品とともに戻ってきた。「これ、新品じゃねえかよ! しかも充電コードないと使えないじゃん。だめ、もう1回!」。
部屋がゲーム会場になって、気晴らしどころではなくなった。集まってくる仲間たちといろいろな話をした。「選手って、自分の部屋に来られるの、あまり好きじゃないと思うんですよ。それなら誰かの部屋をターゲットにしようと」。なぜ自分の部屋が選ばれたか。「気を使わないからでしょ」。自分も先輩にそう接したりしてきたから後輩も拒まない。「僕がすごく極端な人見知りをするので、だから来てくれる後輩にはこっちも、っていうのがあるかもしれませんね」。
なれ合ったつもりはない。ある年、横浜で行われた投手会。チーム状況が悪かった。締めのあいさつで、見せない自分を見せた。「叱ったり注意したり、1人で泣きながら語ってました。お前らがちゃんとやらないと、このチームは強くならないって。僕のそんな姿見たの、みんな初めてだったと思う」と振り返る。
話したいことを携帯電話にメモして、練習前に投手陣ミーティングで伝えたこともある。「もともとキャラが軽いから伝わったかは分からないけど、こうしないといけないっていうのがすごくあって。考えてないようにやってるってすごく言われるけど、そうじゃないです。1軍しか知らない選手じゃないから。ケガしてる選手のことも分かってるから」。
チームのことを実はすごく考えてます-。そう言う。11月4日に戦力外通告を受けた。心配する声、会って励ましたいという誘いをたくさん受けた。11月下旬頃まではわびて、断り続けた。「チームに迷惑をかけたくなかったので」。もうロッテの投手としてはマウンドに上がれない。でも自分がもし感染してしまったらシーズンが、CSが。そんな思いだった。
愛する家族に見守られながらのトライアウトを終え「これから」を多角的に考える。いろいろな世界の人に話を聞いている。何となくの芯はある。「ファンの人たちに」「野球人口が」…そんな言葉が何度か出た。「野球が好きだから。これからもずっと野球人であり続けるわけですし」。笑って話をはぐらかすこともあった高校球児は、千葉ロッテマリーンズでたくましくなった。