全国の高校野球OB・OGが、甲子園で試合をする「第16回マスターズ甲子園」が、11月9、10日に行われた。PL学園(大阪)の“復活”で話題になった大会に、本紙芸能記者(36)が市浦和(埼玉)OBの一員として出場し、岐阜県選抜と9日第1試合で対戦。憧れの聖地でプレーした。

市浦和対岐阜県選抜 5回表1死一塁、打球の行方を見る市浦和・大友記者(撮影・上田博志)
市浦和対岐阜県選抜 5回表1死一塁、打球の行方を見る市浦和・大友記者(撮影・上田博志)

「バッターは 大友くん」

5回1死一塁。代打で出番が巡ってくると、スタンドやテレビで聞き覚えのあるアナウンスが聞こえた。高校時代に愛用し、今大会のために修理したスパイクで足場をならす。バットを構えると、目の前には大きなバックスクリーンがそびえ立つ。「本物だ…」。

神戸・本山南中吹奏楽部の生徒たちが奏でてくれる「コンバットマーチ」が銀傘にはね返って響く中、あの夏の記憶がよみがえった。

高校時代、甲子園を目指した球児の1人だった。2001年(平13)夏、埼玉大会3回戦で最後の打者になった。相手左腕の外角に逃げるスライダーを強振し、空を切った。その瞬間は今でも夢に見る。

18年後、何度も練習で妄想した甲子園の打席に立っている。5球目の外角直球に泳いで三ゴロ。失策で出塁すると、次打者・三枝幹生(43)は中越え二塁打。「転ばないように…」。現役時代よりも数十キロ重くなった体を必死に動かしたが、自然と笑顔になる。「甲子園の土って、すごくサクサクしてる!」。まるでスローモーションの中を動く感覚で(実際、かなりの鈍足…)ダイヤモンドを1周した。

同大会は毎年11月、2日間にわたって行われ、各都道府県予選を勝ち上がったチームや選抜チームが集う。1チームの登録は最大50人。球場の使用制限のため、試合時間は1時間30分と定められており、チーム全員が出場するためには、速いテンポでのゲーム展開が求められる。

5回裏、捕手として守備につき、2学年先輩の中沢佑介(38)とバッテリーを組む。3連打などで1死満塁のピンチ。すでに開始から1時間10分以上経過…まだ出場していない選手もいる。次のPLの試合を見ようと続々と人が集まるスタンドからは、昨年の“カナノウ旋風”を支えた魔曲として知られる巨人のチャンステーマ「Gフレア」が鳴り響く。「終わらない…これがうわさのマモノ…」。するとグラウンド内から「楽しんでいきましょう!」と甲高い声が聞こえてきた。(敬称略=つづく)【大友陽平】

◆マスターズ甲子園 全国高校野球OBクラブ連合主催で04年から開催。全国の高校野球OB・OGが、憧れだった「甲子園」を目指し、性別、世代、甲子園出場経験の有無や、元プロ・アマチュアなどの経歴に関係なく、出身校別に同窓会チームを結成して参加する。同連合加盟校は全国41都道府県で677校(10月現在)。大会名誉会長は、故星野仙一さん。