運命の日を待つ選手たちがいる。「プロ野球ドラフト会議supported by リポビタンD」が26日、都内で開催される。ドラフト候補に挙がる選手を「指名を待つ男たち」と題して全3回で紹介する。第1回は「甲子園に届かなかった球児」。聖地には届かなかったものの、地方大会で存在感を発揮。悔しさを胸にプロ入りを目指す球児に迫った。

ドラフトファイル:明瀬諒介
ドラフトファイル:明瀬諒介

ドラフト会議が刻一刻と迫る中、鹿児島城西の明瀬(みょうせ)諒介内野手(3年)は泰然自若に「運命の日」を待っている。「気持ちは今までと変わらない感じ。いつも通り」。大阪・堺市出身。野球を始めた頃から阪神ファンだった。助っ人マートンに目を輝かせていた。「インタビューが面白くて、プレースタイルとかも好きでしたね」とし、「今も阪神ファンですけど、12球団どこでも行くつもりでいます」と力を込めた。

184センチ、90キロと恵まれた体格。高校通算49本塁打を積み上げた。世代屈指のスラッガーの呼び声もある。最後の夏は鹿児島大会4強止まり。目標とした甲子園出場は逃した。「負けて悔しかったですけど、終わったことなんで切り替えはできました。元から引きずったり、落ち込むようなタイプでもない」。敗退翌日から木製バットを手に振り込み始めた。「目ぶれとかするので、しっかりミートするように」と打撃フォームを見直し、上げていた左足をすり足にも変えた。「速球に対応できるように。木製でも金属(バット)と変わらない感じで打てている」。フリー打撃では柵越えを連発し、新打法に手応えを感じている。

投げては最速152キロを誇り、投打で注目された。12球団の中には「二刀流プラン」を持つ球団もあるという。明瀬は「球団に任せたいなと思っている」とした上で、「今は、個人的には野手一本でと考えています」。ノックでは本職の一塁に加えて、中学時代から経験のある三塁に本格的に再挑戦している。「高校の時も何回かサードを守っていた。プロで幅を広げるために」と明かした。

「楽しんでプレーしてんな」。8月の盆休みに大阪の実家に帰省。夏の甲子園は盛り上がりを見せる真っただ中だった。慶応(神奈川)-仙台育英(宮城)の決勝は一塁側アルプス席から見届けた。「慶応の応援がとにかくすごかった。自分もこういう雰囲気でプレーしたいなと思った」。初回には慶応・丸田が決勝史上初の先頭打者アーチを放った。明瀬は「チームの流れが変わるのがホームラン。鳥肌が立ちました」と興奮を隠せなかった。

「(入団した)球団のクリーンアップを打てる打者が理想。3冠王を狙える選手になりたい」。大きな夢を抱き、九州の怪童・明瀬がプロの世界に飛び込む。【佐藤究】