捕手として通算出場試合1527、コーチとして4球団で計21年間(うち1年間は編成担当)指導にあたってきた田村藤夫氏(61)が、「早大3羽がらす」として名をはせた楽天福井優也投手(33)の復活に期待した。

   ◇   ◇   ◇

この日は楽天黒川、巨人菊田らイキのいい若手の成長を確認しようと思っていた。しかし、最も心を動かされたのはプロ11年目の福井のピッチングだった。

6回から登板した福井は先頭の小林をフォークで空振り三振に仕留めると、2イニング、打者6人を完全に封じ込めた。特に良かったのがカットボールだ。右打者の外角、左打者の内外角にきっちりコントロールできていた。速球も最速146キロと勢いがあり、フォークも低めに落ちる。打たれる気が全くしなかった。

ナマで福井を見るのは、彼が広島にいるとき以来だった。球威はあったが、コントロールが良かったという記憶はない。数年ぶりに直に見た福井はバッチバチのコントロールで、イメージが変わってしまうくらいのインパクトがあった。

この試合を含めて、今季の防御率(イースタン9試合)が8・68とはとても思えない。この日の内容ならばすぐに1軍に上げるべきだろう。先発としての経験も豊富だし、短いイニングだけではなく、先発投手が早い回にKOされた時のロングリリーフもこなせる。

1軍ではセットアッパーの福山が調子を落としていて、テコ入れが必要になっている。福井のあとに1イニング投げた牧田は、正直言ってボールにキレがなかった。真っすぐの力が西武時代ほどに戻っていない感じで、すぐに1軍はつらい。25日からセ・リーグとの交流戦が始まるタイミングでもあり、広島時代に29勝を挙げている福井の力は、1軍にとって大きなプラスになると思う。

彼の復活に期待したい理由はもう1つある。右肘靱帯(じんたい)を断裂し、リハビリ中の日本ハム斎藤佑のことだ。西武大石を含めて「早大3羽がらす」ともてはやされてから、11年がたった。大石は引退し、斎藤佑に刺激を与えられる存在は福井しかいない。福井が輝きを取り戻せば、斎藤佑にも必ずいい効果をもたらすと私は思う。福井にはもうひと花、ふた花でも咲かせて欲しい。(日刊スポーツ評論家)