おなじみの曲が流れる中、マウンドに足を進める藤川球児の姿には、やはり心を動かされた。引退表明後の初登板は5点をリードされた6回だった。

「あと何度、この姿を見られるんでしょうかね。きょう来たお客さんはよかったですね。自分もそうですけど…」。サンテレビで解説していた下柳剛はそう話したが、それが涙声に聞こえたのは間違いだろうか。

しかし正直に言って見どころは、ほとんどそこだけという試合になってしまった。広島九里亜蓮に9回途中まで好投され、最後に1点を返したものの完敗を喫した。好投手にいい投球をされれば簡単には打てないものだが、どうもモヤモヤした気分は残った。

阪神先発のガルシアだ。なんと言えばいいのか、歯止めの利かない投球というか、3回に四球をきっかけにズルズルと4点を失い、早々と交代。およそ勝てるムードはつくれなかった。

内容そのものよりも頭をよぎったのが「まだガルシアを投げさせるのか…」ということだ。もちろん、まだ試合数はあるし、先発投手は限られている事情もあるので仕方ないという考えもあるだろう。それにしても…と思う。

最近、ささやかれている話を思い出した。現在、日本にいる外国人選手の扱いについてだ。新しい助っ人獲得の状況が不透明なこのオフ、現状の選手をリリースするかどうか慎重になるのでは、ということだ。

「コロナの影響で今年は米国のマイナーリーグが試合を開催しなかった。これは当然、外国人補強に影響するだろう。基本的に獲得対象となるのはマイナーの選手なので」。ある球団の関係者はそう話す。

もちろん昨季までのリストは各球団にあるだろうが1年のブランクは大きい。視察の機会が少ないまま迎えるドラフトと同様、外国人獲得も今年は例年とは違うということだ。

だから現在の外国人の扱いに影響するのでは-という見方になるのだが、それにしても、もうガルシアの力量は分かっているだろう。それなら救援に回っている投手を先発させるとか2軍で先発している投手を使うとか、そういう起用法を見たいと思ってしまう。

球児が現役で投げる最後の時間にルーキー西純矢が1軍で先発を経験すれば、西純にとってはもちろん、チームの将来にもいい影響があると思うのだが-。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神西純矢(2020年10月18日撮影)
阪神西純矢(2020年10月18日撮影)