えっ? 阪神優勝したんか? そんな風に思った虎党はさすがにいないだろうが指揮官・矢野燿大の「胴上げ」には少し驚いた。詳しくは虎番記者の記事で読んでいただくとして異例の光景なのは間違いない。

「いや、ホンマに秋に見たいですよね。ホンモノの胴上げを目にしたいですよ」。虎番キャップの桝井聡はつぶやいた。せんえつながらキャップとして経験した立場から言わせてもらえば、実際に優勝となれば、それは、もう大変である。

普段からバタバタするけれど、その忙しさは別格。バイブモードにしている携帯電話が常に着信し、震え続け、しまいには鳴ってもいないのに震えているように感じたのはあのときだけ。寝ているときもだ。

しかし、それもマシだったかと思うほど今年のキャンプ取材は大変だ。この日のように雨が降れば、これまでは室内練習場の端っこだったり、ブルペンの軒先だったりと雨をしのげる場所で練習を見守るが、そこはコロナ禍での厳戒キャンプ。

「密を避けろ」とばかりそんな場所に立ち入ることは強く制限され、多くの記者、カメラマンが傘を差し、カッパを着て外に立っている。食事のときもその状況のまま食べる。いまの世の中、若い女性記者も多くいるが同じ状況だ。

もちろん精神面、体力面でもっときつい仕事はいくらでもあるだろうし、どうこう愚痴るものでもないけれど今年で20回目の宜野座キャンプ、宜野座元年の03年から見ているつもりだが、こんな感じは初めてだ。

そして現場の記者がそれなりに努力して世の中に記事を送り続けているのも事実だ。何かと批判もあるけれど関西のスポーツ紙として、やっぱり阪神の話題を外せないのは、こういうコラムを読んでいただいている方々が一番、よく理解されていると思う。

雨が降って試合中止、ネタ薄になれば記者もブルーだ。そんなとき目の前で繰り広げられた“胴上げ”。「何やってるんや」と思う人もいるだろう。それより野球で貢献しろ、糸井嘉男、西勇輝という気もチラッとしないでもない。

でも、これもプロだ。フェラーリで目立つ人。厳しくにらみを利かせる人。それはそれでいい。矢野はこういう感じ、なのだ。本当に秋に胴上げされて「ほらね。予祝って言うたでしょ」と笑うため、さらに必死になれ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)