野球の取材にかかわり30年以上になるが、監督が選手に対して「そんなことをしていたら2軍に落とすぞ!」と直接話している光景を初めて見た。キャンプ第3クール初日だった10日のことだ。

練習中に個別の取材時間をもうけていたのは指揮官、岡田彰布である。時間は午後2時半過ぎ頃。そのすぐ横を通っていたのがミエセスだ。大きなバッグを提げて、宿舎に戻ろうとしている。「はっ」と岡田の存在に気づき、隠れようとしたが見つかった。

すかさず「なんや。もう帰るんか?」と岡田。ミエセスはニッコリうなずく。すると岡田は笑いながら、こう言うではないか。「そんなに練習せんねんやったら2軍に落とすで」。

これにミエセスはやはりニッコリ笑って「体を休めるのも大事ですから」。すると岡田はあきれたように「昨日(9日)休んだばっかりやろ?」。この指摘には「はい。昨日も休みました」。もちろん通訳を通してのジョーク。すぐ横で聞いていて思わずニヤリとしてしまった。

指揮官として選手とは一線を画すスタイルの岡田だがミエセスに関しては「ミエちゃん」と呼び、かわいく感じていることを隠さない。昨年のビール掛けでもそうだったが、普段から、いわゆるイジっている。だからこその冗談だが、いかにも「ムードメーカー」という感じだ。

来日2年目のこのキャンプもご機嫌で過ごしているミエセス、そこにはちょっとした“理由”もある。それはゲラの新加入だ。ゲラはパナマ出身、ミエセスがドミニカ共和国と出身国は違うが、言葉は同じスペイン語である。

「昨年は自分だけだったけど、このキャンプは同じ言葉を話す選手がいるので、そういう面でリラックスしているように感じます」。スペイン語通訳の橘佳祐はそんな話をした。昨季は話せる相手が実質、この橘だけだった。母国から友人らも来日したりしていたが、チームメートに言葉の通じる相手がいるのは投手と野手の違いがあるとしてもリラックスできるのだろう。少し想像するだけで分かることだ。

そんなミエセスが放った「24年チーム1号」の大きな1発。これがキャンプなのかと思わせるほど多くの観客が入った宜野座の球場を大いに沸かせていた。やはり岡田阪神の欠かせないピースかもしれない。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

紅白戦 2回裏白組1死一塁、ミエセスは左越え2点本塁打を放つ(撮影・加藤哉)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、ミエセスは左越え2点本塁打を放つ(撮影・加藤哉)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、ミエセスは左越え2点本塁打を放つ。投手は茨木(撮影・加藤哉)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、ミエセスは左越え2点本塁打を放つ。投手は茨木(撮影・加藤哉)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、ミエセスは左越え2点本塁打を放つ(撮影・上山淳一)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、ミエセスは左越え2点本塁打を放つ(撮影・上山淳一)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、茨木はミエセスに左越え2点本塁打を被弾(撮影・加藤哉)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、茨木はミエセスに左越え2点本塁打を被弾(撮影・加藤哉)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、ミエセスの2点本塁打のボールを手に喜ぶファン(撮影・藤尾明華)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、ミエセスの2点本塁打のボールを手に喜ぶファン(撮影・藤尾明華)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、左越えに本塁打を放ったミエセス(撮影・藤尾明華)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、左越えに本塁打を放ったミエセス(撮影・藤尾明華)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、左越え2点本塁打を放ったミエセス(左から2人目)は糸原とハグ(撮影・上山淳一)
紅白戦 2回裏白組1死一塁、左越え2点本塁打を放ったミエセス(左から2人目)は糸原とハグ(撮影・上山淳一)