いい光景だった。秋を感じる風が甲子園に吹く中、盛り上がり、やさしい時間が流れた。今季最終戦で、誰にも愛された原口文仁の引退試合。ファンはもちろん、ベンチに入っていない現役選手やOBらもスタンドで見守る中、これ以上ない華々しい展開になった。

あと1本で40発、あと1打点で大台の「100」という佐藤輝明が1回、昨季までの猛虎戦士・青柳晃洋からいきなり打点をマーク。5回には、やはり青柳から今季40号を右翼席へ豪快に放り込んだ。

投げては村上頌樹が7回2失点で14勝で最多勝、最高勝率を達成。そのうち1失点は今季限りで大リーグに挑戦するという村上宗隆に1発を浴びたものだ。大山悠輔も3四球の後、7回に「代打・原口」で出塁率争いのトップに立った。

阪神の優勢でなければ、原口の出番もどうなるか苦心するところだったかもしれないが、圧勝ムードで代打から捕手としてマスクをかぶることもできた。みんなでそう持っていった試合だったと思う。

試合前、球団幹部と話していたとき、こんな話題が出た。ポストシーズンが始まった米大リーグ。「急に面白くなってきたね」と意気投合した。スクイズバントあり、必死の継投あり。これぞ野球という感じになったからだ。

試合数の多い大リーグのシーズン中は、よく言えば「力対力」。淡泊なイメージも漂う。あのイチローも、繊細さという部分では日本が上回っているという趣旨の話をしていた。大谷翔平や山本由伸、鈴木誠也らの活躍は楽しいが。

その意味で、この日の甲子園はある種、大リーグのシーズン風味だったと感じる。村上も青柳も正面から勝負したし、原口の打席では帝京の後輩・清水昇を登板させたりした。これも今季で指揮官の座を去る高津臣吾の計らいだろう。

真剣勝負だが、至る所に「武士の情け」を感じた。いいなと思ったのである。だが、やはり、その雰囲気はここでひと区切りだろう。10月はCS、そして日本シリーズの戦いが待つ。もちろん指揮官・藤川球児は分かっている。

「対戦相手は関係ない。待ち受けてはいけない。立ち向かわなければいけない。3つ取るために」-。観衆の前で「あと3つ勝つ」と約束した球児。ユニホームを脱ぐ原口のためにも、あえて言わせてもらえば「あと7勝」が最高だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ヤクルト 引退セレモニーで原口(左)に花束を贈呈する川藤氏(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 引退セレモニーで原口(左)に花束を贈呈する川藤氏(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト  9回、捕手として出場した原口は笑顔で交代する(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト  9回、捕手として出場した原口は笑顔で交代する(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト  9回、捕手で出場した原口(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト  9回、捕手で出場した原口(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 9回表、岩貞祐太の投球を受ける捕手原口(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 9回表、岩貞祐太の投球を受ける捕手原口(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 9回表ヤクルト無死一塁、捕手原口は梅野と交代し笑顔を見せてベンチへ引き揚げる(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 9回表ヤクルト無死一塁、捕手原口は梅野と交代し笑顔を見せてベンチへ引き揚げる(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト  9回、岩貞(右)とバッテリーを組んだ原口(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト  9回、岩貞(右)とバッテリーを組んだ原口(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト  引退セレモニーで胴上げされる原口(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト  引退セレモニーで胴上げされる原口(撮影・上田博志)