プロ注目の左腕、前橋商・井上温大投手(3年)が投打に活躍し、逆転勝ち。4年ぶりの準決勝進出に貢献した。

「勝ててよかった。先制されてからは『我慢』と言い聞かせて投げました。バッティングもいいところで1本出てよかったです」

2試合ぶりに先発したこの日、立ち上がりはボールが上ずり、制球が定まらない。2回1死から2四死球を挟んで3連打を浴びて3点を先制された。

しかし、自らのバットで流れを呼び込む。5回1死二、三塁で中越え2点適時打。逆転2点打を放った高崎との3回戦(21日)に続いて殊勲打を放った。さらに押し出し四球で同点に追いつくと6回に勝ち越し、7回に2点を加えてリードを広げた。

プロ野球3球団のスカウトが視察する中、注目の投球は7回5安打3失点。6三振を奪って最速は141キロだった。今大会はここまで4試合に登板し、いずれも不安定な立ち上がり。試合開始時のまっさらなボールが滑るといい、回を重ねて土などがつくと、指になじんでくるという。「ボールをもっとこねるとか、対策を考えないと」と口にした。

因縁の試合だった。井上の父・典之さん(45)は樹徳野球部OBで投手。高校2、3年時(1991、92年)に夏の甲子園に出場したが、ベンチには入れなかった。一方、樹徳・井達誠監督(44)は当時の遊撃手で主将。三塁側スタンドで声援を送った典之さんは「母校ですが、今は前商一筋」と、愛息の活躍に目を細めていた。【片倉尚文】