夏季北海道高校野球大会は11日、函館地区を皮切りに開幕する。17年夏以来3年ぶりに単独出場する南茅部は、12日の2回戦で函館水産-大野農・七飯・八雲連合の勝者と対戦。3月まで選手1人だった浜林龍星(3年)は自ら集めた11人の助っ人と参戦。南茅部地区の縄文遺跡群を研究する「縄文クラブ」のメンバーも加わり、コロナ禍で中止となった縄文文化発表会の分まで奮闘し、02年夏以来の勝利を目指す

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特別な夏に単独出場の夢がかなった。南茅部の生徒数は46人と少なく、部活は掛け持ちが認められているが、3月まで野球部は浜林と女子マネジャー1人だけ。1年秋からたった1人で練習してきた浜林にとって、待ち焦がれた瞬間だ。本来は春季大会から単独参戦するはずだったが、大会は中止。「休校中、このまま引退なのかと思っていた。最後に試合ができてうれしい。関わってくれた多くの人に恩返しのプレーをしたい」と意気込んだ。

昨秋は函館稜北、函館西と連合で出場も、初戦で函館大柏稜に0-18で大敗した。大会後、浜林は「最後の年だけでも単独で出たい」と藤内大樹監督(28)に相談。まず函館尾札部中で同じ野球部だった佐藤迅(3年)ら5人を勧誘し、中学の野球部の後輩だった酒井伶輔(2年)に頼み、2年生6人も加わった。酒井は「中学時代から浜林さんの後輩だった人が多く、努力家で優しい人柄をみんな知っていた。すぐに集まった」と、人柄を仲間が集結した要因に挙げた。

浜林の呼びかけは「縄文ロマンの南茅部」をPRする好機にもなる。旧南茅部町内にある遺跡は「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一部として世界遺産への登録を目指しており、近隣の同校には、その文化を研究する「縄文クラブ」がある。助っ人のうち生徒会副会長の佐藤ら4人がクラブ員だ。

クラブでは月1回、南茅部地区の縄文文化交流センターで土器の再現や、シカの角を用いた釣り針づくりなどもする。6月に函館市内のイベントで初めて研究発表する予定だったが、コロナ禍で中止に。佐藤は「ショックだった。野球で頑張り、僕らの取り組みも知ってもらえたら」と話す。

南茅部町は04年に函館市に編入された。それから16年。球児の全力プレーで、太古から続く歴史に、新たな1ページを加える。【永野高輔】