元エースの高校最後の11球だった。旭川大高の歌住惇投手の出番は2点ビハインドの8回1死から。1安打1四球も最後は投ゴロに打ち取り、打者3人で無失点。それでも「自分の投球で流れを変えられなかった」と悔やんだ。味方の反撃もならず、初戦で散った。

昨夏、2年連続で北北海道大会を制し、背番号18で甲子園のベンチ入りを果たした。新チームでの昨秋は背番号1をつけたが、今年6月中旬に右肘靱帯(じんたい)を負傷。キャッチボールすらままならず「チームのサポートにまわろうかなと思った」と、ベンチ入りを諦めかけていた。

奮い立たせてくれたのは、端場雅治監督(51)だった。大会前に受け取った背番号10。「投げられない状況で10番をいただいて監督に感謝の気持ちしかない。戦力なんだなという気持ちになった」。地区大会2試合で登板はなかったが、「最後投げさせてあげたい」(端場監督)との思いを受け、夏のマウンドをかみしめた。

2年前のエースで巨人入りした沼田翔平(20)の背中を追う右腕は「甲子園でも投げられなかった。神宮で優勝を目指して強い大学に行きたい」。感謝の11球を胸に次のステージに向かう。【山崎純一】

▽旭川大高の端場監督 勝ちたかったなというのが率直なところですね。チャンスもありながらミスもあってというところでいうと実力が足りなかったのかな。彼らなりにはよくやってくれたが、欲を言えば勝ちたかった。