優勝候補の慶応(神奈川)が投打の歯車がかみ合い、初戦を白星発進した。

北陸戦(福井)に先発した2年生エースの小宅雅己投手が7回4安打無失点と好投。打線もSNSで「慶応のプリンス」と称される丸田湊斗外野手(3年)が2安打2打点で9得点と好調な打線をけん引した。「エンジョイ・ベースボール」を掲げ、髪形を丸刈りに強制しない慶応野球部。さわやかに髪をなびかせる慶応ボーイズが新風を吹かせる。またPL学園(大阪)時代に甲子園で通算13本塁打を放った清原和博氏(55)の次男、清原勝児内野手(2年)は代打で左飛だった。

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「KEIO日本一」に向けて好発進した。7回2死三塁。エース小宅は初めて三塁に走者を置いても「少し気合を入れて投げられた」と遊ゴロに打ち取った。帽子を取り、髪をなびかせながら、爽やかな笑顔でベンチへ戻った。

小宅のみならず、投打のバランスが良いのがV候補の特徴だ。5回まで毎回得点で12安打9得点。激戦区の神奈川では準々決勝以降の3試合で6本塁打と破壊力抜群だ。今春センバツにも登板経験のある北陸の3投手を難なく攻略した。

しのぎを削る全国の猛者が集う甲子園でも新風を吹かす慶応ボーイズ。とりわけ甘いマスクで世間をとりこにしている選手がいる。1番の丸田は端正な顔立ちからX(旧ツイッター)で「かっこよすぎる高校球児」としてバズった。50メートル5秒9の快足で走る姿はまさに「慶応のプリンス」。もちろん野球も一級品。この日も先制のホームを踏んで、2安打2打点1盗塁と活躍した。森林貴彦監督(50)も「彼の出塁と盗塁はかなりの武器。塁に出てどんどん機動力でという存在」と評価する。

自由な校風は応援にも表れる。今夏、高校野球界では「も、もり、もりあ、盛り上がりが足りない!」のサッカーが元の応援歌が全国的に流行している。慶応はそれを独自にアレンジ。19年決勝以来の4万人の大観衆の中で「もりばやしが足りない!」と森林監督の名前を入れた応援歌が球場に響いた。名前を連呼される指揮官は「うちはそういうのもアリな雰囲気で、トータルで野球を楽しんでいきたい」と話した。

次戦はボンズこと真鍋慧内野手(3年)擁する強豪・広陵(広島)との一戦を迎える。小宅は「高尾(響)くんが2年生エースで引っ張っていくチーム。そこに真鍋さんとかがいて勝つチームだと思う。投げ勝って、打ち勝って、どっちも勝ちたい」。慶応ボーイズのはじけるような笑顔が球場全体を巻き込んでいく。【星夏穂】

○…慶応4番の加藤右悟外野手(2年)が先制適時打を含む2安打2打点と役割を果たした。初回2死三塁、カウント2-2からの5球目、145キロ直球をとらえ、左前打を放ち先制。ガッツポーズを決めた。4回も無死一塁から二塁打を放ち、16強入りに貢献。「人が多くて、楽しかったです。僕たちの目標は日本一なので気持ちを切り替えて、次も頑張りたいです」と冷静に話した。

◆4元号勝利 慶応が大正、昭和、平成、令和の4元号で勝利。松商学園、高松商、広陵、広島商、北海に次いで6校目の達成。関東の学校では初。

◆慶応の9得点 夏の大会では慶応普通部時代の1916年、優勝した第2回大会の準々決勝(9-3香川商)に並ぶ107年ぶりの学校最多得点となった。春の9得点以上は60年1回戦(15-2鹿児島商)の1度。

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