低反発バットの本塁打第1号は、プロ注目スラッガーが放った。第96回選抜高校野球大会から導入された新基準のバット。従来より飛ばなくなった影響もあってか、開幕日は3試合で本塁打0だったが、2日目の第1試合で豊川(愛知)・モイセエフ・ニキータ外野手(3年)が阿南光(徳島)戦で右翼ポール際へライナーで放り込んだ。試合は敗れたが、強烈な印象を残した。明豊(大分)は敦賀気比(福井)にサヨナラ勝ち。高崎健康福祉大高崎(群馬)は箱山遥人捕手(3年)が攻守に光り、学法石川(福島)を下した。

   ◇   ◇   ◇

プロ注目の豊川の主砲、モイセエフ・ニキータ外野手(3年)が「低反発バット1号」を残して、初戦で春の舞台を去った。

「3番中堅」で出場し、1-5の8回1死一塁。2球連続で空振りし、間を取って見極めた3球目。阿南光の吉岡暖投手(3年)の高めフォークを捉え、右翼ポール際に運んだ。両親はロシア出身で、180センチ、82キロのスラッガー。初戦敗退に「(本塁打で)うれしいより負けて悔しい。自分はまだ力が足りないと分かった」と無念の表情を見せた。

「自分のスイングで」と心に決めて臨んだセンバツだった。昨秋の東海大会を前に、打撃不振に陥った。普段は明るいが、林優大投手(3年)と弟で左翼に就く林優翔外野手(2年)に「どうしよう、マジ打てん」と明かした。「あの時は打てなくて、泣きそうになってました」。普段はエネルギーになる周囲の応援も、耳に入ってこなかった。「結果で今後の野球人生が変わる。プロのスカウトもいて、気持ちがいろいろ積み重なっていた」と重圧に負けそうになっていた。そんな時、長谷川裕記監督(30)が「打とうとするんじゃなくて、自分のスイングをしよう」と声をかけてくれた。言葉が光になった。好結果を出し、センバツにやってきた。

初の甲子園は5打数1安打2打点、3三振。「1球で捉える集中力や守備面でミスが出た。レベルアップしたいし、プロの世界で活躍することを意識して」と課題を認識した。甲子園にその名を残し、「モイセエフ」とスコアボードに記され感激していた父のセルゲイさん(48)は「監督に感謝ですね。信頼関係が構築されている」と話した。

苦闘していた姿を知る左翼の1番林優は、6番から始まった9回の攻撃で適時打を放ち、9回2死満塁で3番モイセエフに回した。しかしフォークに対応できず空振り三振。林は「ニキータさんと一緒に夏の甲子園で優勝できるように頑張ります!」とリベンジへ力を込めた。

高校通算16号が大会1号に。夏の舞台にも帰ってくる。【中島麗】