MLBは今季からナ・リーグでDH制を導入することで合意したと、マンフレッド・コミッショナーが10日、発表した。 DH制は1973年にア・リーグで導入されて以降、ナ・リーグでも導入の検討が何度か行われたが、導入しないままだった。

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【解説】 新労使協定を巡ってロックアウト(業務停止)が続く中、MLBでは金銭面での課題を残す一方で、ユニバーサルDH(両リーグでのDH)の導入が決定的になった。その場合、エンゼルス大谷翔平投手の打席数が増えることになり、タイトル獲得の可能性も膨らむ。昨季の大谷は「リアル二刀流」で大活躍したとはいえ、DHのない敵地での交流戦では、代打待機が基本線。今季のエ軍は、敵地交流戦が計10試合予定されており、その全試合にDHで出場するとすれば、40~50打席ほど増えることになり、本塁打数が増える可能性も高まる。

実際、昨季48本塁打で初タイトルを獲得したウラジーミル・ゲレロ(ブルージェイズ)は、46本塁打の大谷より59打席増。約13・9打席に1本塁打を放った大谷に、40打席以上が増えるとすれば、3本塁打が上積みされ、大谷がタイトルに手が届く計算となる。

また、パイレーツ筒香嘉智の場合、現時点では主に一塁手や外野手として期待されているものの、DH枠が加われば、出場機会が増加する可能性は大。「できれば打席に立ちたくない」と公言しているパドレスのダルビッシュ有投手にとっても、投球に専念できるだけに、両リーグでのDH導入は、少なからず各選手に影響を与えそうだ。【MLB担当=四竈衛】

◆DH制の採用 大リーグは1973年にア・リーグで導入されて以降、ナ・リーグでも何度か検討は行われてきた。今回の決定で五輪、WBCなどの国際大会を含めて、大部分が採用することになった。現在導入してないのはセ・リーグ、東京6大学野球、高校野球など。韓国、台湾、中南米などの各国リーグ、社会人野球、全日本大学野球選手権なども採用している。

○…ナ・リーグのDH制導入は、日本球界にも影響を与える可能性がある。コリジョンルールなど米メジャーで新たに決まったものは、翌年以降、日本でも導入される傾向がある。今回はルール変更ではないが、セ・リーグでは、かつて巨人がDH制導入を提言していた。メジャーが両リーグともDH制となることで、セ・リーグのDH制導入に関する議論が再燃することも考えられる。