若き主砲がついに目覚めた。楽天の中川大志外野手(24)が、自身初の2打席連続本塁打を放った。3試合ぶりのアーチで4番起用に応えた。11年秋に右膝を痛め、一時は育成契約となった苦労人。今季年俸630万円(推定)の激安4番打者が大仕事を果たし、チームを2カード連続の勝ち越しに導いた。
貫禄たっぷりに33インチのバットを振り抜くと、打球は2打席連続でスタンドの上をはねた。中川は「甘い球が来たら振る準備はできていました」と落ち着いていた。2回の1発目は2球目で、4回の2発目は初球。4番起用にも、持ち味の積極性は失わなかった。今季年俸630万円(推定)の4番打者が、自身初の2打席連続本塁打で1億円プレーヤーのヤクルト成瀬を沈めた。
この瞬間を待っていた。ベンチでは、大久保監督が両手をあげて出迎えた。2軍監督時代からその長打力にほれ込み、今春の沖縄キャンプでは「デーブ枠で、無理を言って入れてもらったんだよ」と1軍メンバーに同行させた期待の大砲候補。この日の2本で規定打席未到達ながら打率は3割3分7厘、本塁打はチームトップタイの5に乗せた。「まさに4番の仕事だった」と、秘めた能力が花開いた瞬間を喜んだ。
固く結ばれた師弟の絆がある。昨年のクリスマスに大久保監督の携帯が鳴った。画面に「中川大志」と表示された発信先からは「成田に帰ってきました! これから頑張りますので、よろしくお願いします!」と力強い声が聞こえてきた。約2カ月に及んだオーストラリアのウインターリーグから帰国後、まっ先に報告をしたのが大久保監督だった。自分を信じてくれた恩師のためにも、結果で応えたかった。ヒーローインタビューを終えた中川は「4番だからと特別な意識はせず、自分の打撃を心掛けました。チームに貢献できたことが一番です」と心地よい汗をぬぐった。
球団史上初となる、生え抜き日本人2桁本塁打の可能性を感じさせた2発。それでも中川は「長打にこだわらず、勝つためにやれることをやるだけです」と揺るがない。若き4番の活躍が大久保楽天を盛りたてる。師弟物語はこれからも続いていく。【松本岳志】
◆中川大志(なかがわ・たいし)1990年(平2)6月8日、愛知県豊橋市生まれ。桜丘から08年ドラフト2位で楽天入団。10年9月の日本ハム戦で初出場初安打。11年秋に右膝を痛め、一時は育成選手に。イースタン・リーグでは11年に打点王、13年に本塁打王と打点王の2冠。家族は夫人と1女。186センチ、92キロ。右投げ右打ち。



