決勝打のご褒美は、お姫様だっこ!? 阪神上本博紀内野手(28)の激闘が勝利を呼んだ。5回に勝ち越しタイムリー。7回の守備では走者と激突するシーンがありながら、その裏の打席で右前打。二盗も決めて、ダメ押し点につなげた。闘魂プレーで引っ張った選手会長にほれた? メッセンジャーもサプライズ祝福だ。

 山あり谷ありの3時間23分。ヒーローインタビューを終えた上本が思わず、無邪気な笑顔になった。黒土まみれのズボンに腕をかけ、半袖のメッセンジャーが抱えてくれた。男同士のお姫様だっこ。大男の恩返しが照れくさかった。

 「相手はいいピッチャー。何とか食らいつこうとした結果、ああいう粘りにつながったと思います」

 物語の序章は同点の5回。バントを決めるメッセンジャーをベンチから見届けた。打席に立ったのは2死二塁。決着はヤクルト石川の8球目だった。外角低めのシンカーに無我夢中でバットを出す。左翼に弾んだ勝ち越し打を「メッセンジャーが一生懸命バントしてくれたので、打てたと思う」と静かに喜んだ。試合前時点でメッセンジャーの登板試合は1試合平均2・36点。無援のエースを助ける、最高の結果だった。

 それが一転、7回の二塁守備では苦痛が待っていた。2死一塁から走者の中村が盗塁を企図。二塁ベース上で捕球する際、スライディングにボールを追った左手が奪われた。体が宙を舞って地面に落ちると、立ち上がれなくなった。それでも、上本はしばらくして定位置に戻った。「全然大丈夫ですし、メッセンジャーのために守りました」。直後の7回には2本目の安打に盗塁まで成功。ダメ押しの4点目につなげた。痛みを言い訳にせず、最後まで戦い抜いた。

 実際はあまり得意ではないという、気持ちの切り替え。初回に守備で失策した5月15日中日戦もそうだった。後日、上本は「切り替えられるわけないよ。試合の最後までずっとエラーのことを考えていたし…」と試合を通して続いたネガティブな感情を振り返った。だが、この時も2回に好守でチームを救っている。上本なりの「谷」から「山」へと戻る方法。それは今後の決意表明に詰まっている。

 「今まで通り、その日の試合、1球、1打席をしっかりやっていく。特に(何か)というのはないです」

 ミスをしようが、痛みを伴おうが、常に怠らないのが一生懸命ながむしゃらさ。そんな選手会長には仲間の信頼と、ハッピーエンドが待っていた。【松本航】

 ▼上本が5回に勝ち越しタイムリー。前回の肩書つき安打は、6月6日の日本ハム戦(甲子園)4回2死一、三塁で、大谷から先制の中前打。今回同様、先発はメッセンジャーで1-0勝利の千金打だった。また7回の盗塁は今季11個目で、セ・リーグ4位タイ(最多はDeNA梶谷14盗塁)。