虎が来た。阪神がヤクルト戦で逆転勝ちを飾り、首位巨人に0・5ゲーム差に迫った。逆転を許す苦しい展開も、今の虎には関係ない。6回に代打狩野恵輔外野手(32)が決勝2点打。一気に試合をひっくり返しての3連勝で、勝率5割に復帰した。甲子園では7連勝。さあ明日23日、奪首に挑む。
ヘルメットをかぶった狩野は、一塁ベンチからマウンドをじっと見つめた。同点の6回1死満塁。少しの間を置き、ヤクルトが2番手秋吉への継投を決断。待ちわびた出番が来た。秋吉との前回対戦は4月30日。サイド右腕独特の軌道に空振り三振を喫した。「(バットを)上からかぶせてセンターへ」。それだけを考え147キロ直球をたたくと、打球は前進守備の右翼雄平を越えた。2点二塁打。二塁ベース上で3度手をたたき、コブシを突き上げた。ヒーローインタビューでは、素直な気持ちをマイクにぶつけた。
「みんながつないでくれて、最高の場面で使ってもらえて、最高の結果が出て、お客さんに喜んでもらえて、本当に最高の気分です!」
福留の同点弾で始まったこのイニング。ゴメス、上本、今成がつないで好機が拡大していた。狩野の執念が、9人攻撃の逆転劇の中心となった。チーム逆転勝利は、前夜まで32勝のうち、わずか9勝。広島と並んで両リーグ最少だったが、一気逆転での会心白星。いつもベンチの先頭で声をあげ、ナインを思う男が決めたのも何かの縁だろうか。
守りから仲間が戻ると、狩野はベンチで一番に動く。プレーに関与しなかった選手にも声をかける。「みんなで戦わないとやっぱり勝てない。『ベンチも戦っているぞ!』っていうのをどうにかして見せたい。だから自然と。先輩方にやってもらっていたことを今度は伝えないといけない」。高卒で入団し、15年目。野手では関本に次ぐ「タテジマ歴」を誇る。その関本は2軍で調整中。代打の切り札不在の虎にとって、代打で25打数8安打の狩野は逆襲へ欠かせぬ存在だ。
和田監督も「狩野は代打で何かをつかみたいという。関本がいないけど、そうなってからではなくて、開幕からこれでメシ食っていくという姿勢があったんで、気持ちもだんだん強くなっているよね」と、たくましさを認めるほどだ。3連勝で首位巨人に0・5差と迫った。勝率5割復帰。猛虎復活は、聖地での無類の強さが物語る。これで本拠地甲子園7連勝だ。
妻と3人の息子を支える狩野は試合後、父の日の話題に頭をかいた。「(プレゼントは)何もないですよ」。それでもパパは家族の誇りだ。「次に甲子園に来るときには首位になっているよう、頑張りたいと思います」。仲間の笑顔と4万1449人の大歓声が、大仕事を証明していた。【松本航】
▼阪神が逆転勝利。前日20日までは今季逆転勝ちが9で、広島と並び12球団中最も少なかったが、この日の逆転勝利で10試合目。今季逆転勝ち数トップはソフトバンクの20、次いで日本ハムが19。セ・リーグのトップはDeNAの17試合。ヤクルト16、中日12、巨人11と続いている。
▼阪神は甲子園で本拠地7連勝。本拠地での月間成績を見てみると、4月5勝6敗、5月7勝5敗、6月7勝1敗。5月も20日巨人戦から甲子園5連勝しており、この13試合で12勝1敗。



