慣れ親しんだポジションで流れを作った。右肩の違和感で2軍調整していた巨人阿部慎之助捕手(36)が「6番捕手」で先発出場し、いきなり2ランを放った。1軍でマスクをかぶるのは昨年6月6日のソフトバンク戦以来だったが、早速存在感を発揮。開幕直前に、頼もしい大黒柱がチームに戻ってきた。

 阿部は久々の感覚で打席に入れた。復帰後初打席。2点ビハインドの2回1死二塁。ヤクルト先発新垣の内角のカットボールを豪快に振り抜いた。バットの芯は少し外れたが、角度がつき、大きな放物線を描き右翼席ポール際に飛び込んだ。「少し詰まった。でもファウルにならなかったし、形はどうであれ、結果が出て満足している」と納得の表情だった。

 リズムが戻った。試合開始前。ノックを終えると、休まずブルペンに行き、先発内海の球を受け、ゲームに入った。“捕手阿部”としてのいつもの流れだ。昨季は一塁へ転向したことで、ノックの後は自分1人のための時間を過ごした。ロッカールームに戻って、時にはテレビ鑑賞するなど、リラックスに努めた。

 その流れが苦手だった。一昨年までの試合前は、相手打者のデータを見ながら、配球や試合の流れまで考えた。分刻みで物事をこなし、打撃のことを考える時間もなかった。

 阿部 慌ただしい方がいいのかな。何も考えないでいいしね。(去年は)考える時間がいっぱいあったからね。

 飲食店でも1杯目のドリンクをひと口飲めば、2杯目を注文するほど、先を計算する阿部にとっては、捕手での試合の入りがしっくりきた。いつものルーティンで、無心で打席に入ることができ、本領を発揮することにつながった。

 1軍でマスクをかぶるのは昨年6月6日のソフトバンク戦以来。久々のポジションに「また始まるな、と感じた。キャッチャーから見る景色が良かったよ」としみじみと言った。高橋監督も「見慣れた景色かなという感じはしますけどね」と信頼を寄せた。大黒柱が戻り、チームも今オープン戦最多タイの10得点を挙げた。やっぱり阿部は捕手がよく似合う。【細江純平】