広島が劇的なサヨナラ勝ちで、今季4度目のM点灯だ。安部友裕内野手(28)が1点を追う9回1死二塁、ドリスから逆転サヨナラ2ランを放ち、マジック「12」をともした。9回に阪神福留孝介外野手(40)に一時は逆転となる2ランを浴びた直後の攻撃で、本拠地のファンを歓喜させるアーチを夜空にかけた。広島の最短Vは12日。

 155キロを安部が上からたたきつぶした。夜空に高く、思いを乗せた打球が舞い上がった。「越えろと。入るとは思わなかった」。覇気も乗り移り、右中間の最深部に消えた。自身初のサヨナラ弾は逆転サヨナラマジック点灯2ラン本塁打。水を持って待つナインに迎えられ、水浸しでホームを踏んだ。お立ち台では「最高です!」を3度繰り返し、真っ赤なマツダスタジアムと興奮を共有した。

 冷静にバットを握っていた。これまでは口癖のように使う「覇気」が先行し、冷静さを欠く場面が多かった。しかしマウンドに立つ阪神ドリスの姿を「ワンバウンドも多いな」と分析。ゾーンを絞り「高め、高め、高め」と言い聞かせた。そしてカウント2-1からの4球目。「彼の一番いい球だから」と直球1本でスイング。集中していた。

 打てなかった日や失策の翌日、安部は独り言が増える。言い聞かせて身につけた「覇気」同様、呪文を唱えて自分をコントロールする。「今日は今日の風が吹く」や「フラストレーションでも集中」、「ビーアンビシャス」の日もあった。誰に言うわけでもない音量で、ひたすら自分に言い聞かせ、すり込んでいく。体得完了の「覇気」に、こうして「冷静さ」を加えた。