痛快一打だ。阪神糸井嘉男外野手(36)が、8回に貴重な追加点をたたき出した。1点リードの1死二塁の場面で、右翼フェンス直撃の適時二塁打。昨年DeNA戦で打率3割4分7厘だった得意カードで効果的な一打を見舞った。チームにとっては昨秋クライマックスシリーズで敗れた宿敵。これからも超人パワーで頼みま~す。

 ハマの風に乗せた打球は、右翼フェンス最上部に直撃した。一瞬の静寂の中で響かせた「ドカッ」という音が、勝利を確信させる。糸井は二塁ベースに到達すると両手をたたいて喜び、すぐさま右拳を三塁側ベンチに伸ばした。好投を続けていたメッセンジャーへのグータッチにも見えた。

 1点リードの8回1死二塁。追加点の欲しい場面で打ってくれるのが超人だ。カウント3-1からの5球目、外角にきた127キロスライダーに反応し、うまく体を回転させた。両腕を目いっぱいに伸ばして放った白球は風も味方してグングンと突き進んだ。

 DeNAキラーぶりは健在だ。阪神移籍1年目の昨季はDeNA戦で打率3割4分7厘をマーク。さらに横浜では3割6分4厘と好成績を残した。2年目の今季も相性の良さは変わらない。この日は初回にも右前打を放っており2戦連続マルチ安打。ここ2戦で6打数4安打で2四球を選び、状態を上げてきた。DeNAには昨季CSで悔しい敗戦を経験しただけに糸井のキラーぶりがベイ倒の鍵となる。

 社交的で、幅広い交流が糸井をさらに強くする。2月の沖縄・宜野座キャンプ。読谷村にあるチーム宿舎でウエートトレーニングをしていたときのこと。偶然、同じ宿舎に泊まっていた日立ソフトボール部(女子)のプレーヤーも汗を流していた。何度か会話を交わすうちに仲を深め「よかったら、見にきてよ」と、十数人の選手やチームトレーナーをキャンプ地に招待。ごつく鍛えた筋肉から優しい一面ものぞかせた。日立ソフトボール部は横浜を拠点に活動。切磋琢磨(せっさたくま)したメンバーへ、小雨が降りしきる夜空に流れ星のような弧を描き“共闘”を誓った。

 金本監督は「完全に入ったと思ってさ。ホント、力ないなアイツ(笑い)」とスタンドインの注文を忘れなかった。糸井は試合後「今日はランディでしょう。ナイスピッチング」と好投した助っ人を褒めてチームバスに乗り込んだ。メッセンジャーの活躍もそうだが、勝利を呼び込む一撃が打てる超人のいる虎は強い。【真柴健】