パ・リーグ2位のソフトバンクが2年連続の日本一に輝いた。「SMBC日本シリーズ」第6戦で、セ・リーグ3連覇の広島を2-0で下して対戦成績を4勝1敗1分けとし、9度目のシリーズ制覇を果たした。下克上日本一の立役者は甲斐拓也捕手(25)。1、2回に二盗を阻むなど、今シリーズは6度の盗塁をすべて阻止して広島の機動力を封じた。野手としては初めて打点0で、育成選手として初めて最高殊勲選手(MVP)に選ばれた。
甲斐が「甲斐キャノン」と呼ばれる強肩で歴史をつくった。今シリーズは挑まれた6度の盗塁をすべて阻止。セ・リーグトップの95盗塁を誇った広島の足を封じてMVPまで獲得した。打撃では6戦でわずか2安打0打点だっただけに「ちょっとびっくり。僕とは思わなかったので本当にうれしい」と驚き半分で笑った。
巻き返しを狙った広島の勢いを序盤で止めた。初回1死一塁。外角チェンジアップを捕球し、体勢を崩しながらも昨年のセ・リーグ盗塁王の田中を刺した。際どいタイミングで審判の判定はセーフだったが、工藤監督のリクエストによるリプレー検証で覆った。「立ち上がりは大事にしているところ。自分でも刺せたことは大きい」。さらに2回1死一、三塁では、先発バンデンハークが転がるほど低く鋭い送球で、安部の二盗を阻んだ。「機動力を使ってくると思っていたので準備をしてきた。こういう結果になってうれしい」と感慨深げだった。
シーズン、CS、日本シリーズを合わせて157試合目。体は悲鳴をあげていた。「腰も、股関節も、膝も。痛いところだらけですよ」。シーズン終盤には12連戦もあり、回復が追いつかない。「寝ても寝た気がしない」という夜も1度や2度ではなかった。それでも、母小百合さん(51)が女手ひとつで育ててくれた強い体で、最後まで戦い抜くことができた。
6回を終えると、4安打無失点で切り抜けたバンデンハークと熱い握手を交わし、笑みがはじけた。7回からは高谷にマスクを譲ったが、守備からリズムと勢いをもたらし「1つのミスもそうだけど(盗塁でも)流れを持って行かれる。シリーズ前は不安もあったけど、良かった。投手の方に感謝したい」と喜びに浸った。日本一の瞬間は昨年に続いてベンチから見守った。まだまだ進化の途中。「真の正捕手」を目指し、キャノンを磨き続ける。【山本大地】
▼甲斐が1回に田中、2回に安部の盗塁を刺し、6度すべて盗塁を阻止してMVPを獲得した。1シリーズで6盗塁刺は52年広田(巨人=許盗塁3、盗塁刺6)に並ぶタイ記録で、6連続盗塁刺は52年広田、58年藤尾(巨人)の4連続を抜くシリーズ新記録だ。甲斐の打撃成績は14打数2安打、打率1割4分3厘の打点0。68年高田(巨人)が打率3割8分5厘の1打点でMVPを獲得したが、野手で打点0のMVPは史上初。打率も96年ニール(オリックス)の1割7分6厘(17打数3安打で2V打)を抜いて野手のMVP最低打率で、甲斐が「肩」でMVPに輝いた。なお、甲斐は昨年<6>戦でも白崎(DeNA)を刺しており、昨年からは7連続でアウトにしている。