阪神の来季に向け、日刊スポーツ評論家陣がリレー形式で語る「猛虎再建論」の第7回は、阪急ブレーブスで、最強サブマリンとして通算284勝をマークした元中日監督・山田久志氏(71)です。藤浪、高橋遥らを候補にしたエース養成、抑えの人選&配置を上位浮上のポイントに挙げました。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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阪神が置かれた状況を論じるとき、なぜ長打力に乏しいことを甲子園球場に転嫁するんだろうか。すぐに球場が広いから、浜風が吹くからという。まずそれが不思議だね。ホームランバッターが育っていない、育てられないだけだろ。

開幕から105試合目まで「4番」に起用された大山は、期待が大きいだけに、1つの凡打の内容まで問われる打者にみえるが、実際は主軸になりきれなかった。巨人岡本、広島鈴木、ヤクルト村上らと同じような結果を求めるのは酷だったな。

投手陣は、新戦力の西とガルシアの働きは、当初期待していた数字とは開きがあった。西にしても、よくやったようにみえるが、勝つ投手でないとね。「イニングを稼いだ」「ローテーションを守った」といわれているが、もっと勝ってもらわんとあかんでしょ。

投手力は安泰とは踏んでいないだろうが、なんといっても「エース」を作ることが先決だ。経験の浅い青柳はよく投げたが、まだまだ“投球”というより、ぶん投げてる感じだもんね。岩貞、藤浪も計算外、軸になる投手を作るのは必須条件だ。

なかでも素材的に一級品の高橋遥は絶対に育てないとね。シーズン終盤は本人はいつもと同じ投げ方をしていると思っていただろうが、終盤は左肘が出てこなかったから、このまま投げていたら故障するだろうという感じでみていた。

今年は3勝(9敗)止まりでも、ボールの質の良さは抜けている。ただ勝負どころでバテてるようではプロでは飯を食っていけない。秋季キャンプの走り込みも、膝を強くする走り方をしたり、大腿(だいたい)、下腿(かたい)、腹筋、背筋を鍛えるなど、各部の強化に取り組みたい。

秋季キャンプのうちに体をいじめ、来春の投げ込みに備えたい。潜在能力の高い左腕を一人前にできないようでは、監督、コーチの力量が問われる。また藤浪に中継ぎ、抑えを試すことが、なにかのきっかけにつながる可能性もある。この左右の若手2人が一本立ちしたら阪神は強い。

それにシーズン後半のように、藤川が「抑え」のままでいいのかという問題も横たわる。年齢的に毎試合のスタンバイはしんどくなってくる。藤川固定か、ドリスはダメだろうし、外国人補強でつなぐのか。リリーフ陣はコマはそろっているが、抑えの人選と配置はポイントになる。