侍ジャパン稲葉篤紀監督(47)が楽天松井裕樹投手(24)を究極のユーティリティー投手として期待した。7日、沖縄・久米島での楽天キャンプを視察。通算139セーブを誇る球界屈指の守護神は、今季から先発転向する。最少5試合、最大8試合となる変則方式の東京五輪で、先発、中継ぎ、抑えの経験を培った松井は貴重だ。指揮官は左腕の挑戦を歓迎し、先発としての選考を基本線に、選択肢を探っていく。

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久米島で侍ジャパンの新刀が研がれていた。稲葉監督は松井に「しっかり見ているから頑張ってくれ」と声を掛けた。救援としては代表の常連。昨年11月のプレミア12も左肘違和感で辞退したが、ブルペン陣に加わる予定だった。だが言葉の意味はより深い。先発転向を受け「まずは先発というところから見ていきたい」と適性をチェックする。

新たな可能性を探るのは東京五輪の変則方式を視野に入れるからだ。7月29日から8月8日までの11日間で、勝敗次第で最少5試合、最大8試合で決勝まで戦う。ノックアウトステージ(決勝トーナメント)では敗者復活戦を含む勝ち抜き戦と不確定要素も多い。「負ければ当然、たくさん先発が要る。勝っていけば順調に進んでいくが、先発も多めに決めないといけない。そういうところも見ていきたい」。状況次第で先発から救援にも回れる松井は重宝できる。

松井も覚悟がある。「代表では希望するポジションはないですし、選んでもらってその中でどこでもやるという気持ち。当然、先発適性もあり、中継ぎもできるということを証明できれば使い勝手もいい。先発としてしっかり形を見せることができれば近づく」。24人の侍となる青写真を描いている。

守護神が先発に挑むことで起こる化学変化にも期待がある。稲葉監督は「彼も2年前に先発を少しやったが、両方の気持ちが分かれば大きく成長にもつながっていくと思う」。打なら外崎、投なら松井。究極の利便性を誇る駒の動向を追う。【広重竜太郎】