怪物打ち。広島鈴木誠也外野手(25)が、西武とのオープン戦(マツダスタジアム)で憧れる松坂から左翼席へ2試合連続本塁打を放った。

待ちわびた初対戦で記録した1発は格別の味。結果に一喜一憂しない主砲が珍しく喜びを笑顔と言葉で表現した。コイの主砲はまだ本調子ではない。それでも万全の調整を経て球界の新たな“怪物”に名乗りを上げる。

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野球少年のような笑顔だった。2戦連発の鈴木誠は試合後、2回の打席を思い出しながら表情を崩した。先頭打者で、マウンドには西武松坂がいた。3ボールから1球ファウルを挟んで5球目。135キロのカットボールに体勢を崩されながらたたくと、打球は左翼席後方に吸い込まれた。

「楽しみにしていた。まさか本塁打が打てるとは思っていなかった。子どもができたら自慢したい。一生の宝です」

小学2年で野球を始めた頃から広島黒田や巨人上原らとともに憧れのプロ野球選手だった。高校まで投手だった鈴木少年はよく松坂の投球フォームをまね、テレビゲームでは投手松坂を操作した。プロで“怪物”と初対戦。ソフトバンク時代の17年オープン戦は鈴木誠がWBC出場のため対戦できず、同リーグの中日時代でも巡り合わせがなかった。「こうやって対戦できて楽しかった。感動しながら(打席に)入りました」。無観客の中でも気持ちが高ぶった。

この対戦が本調子に近づくヒントとなるかもしれない。昨秋、侍ジャパンの世界一に貢献したプレミア12。鈴木誠はデータの少ない投手との対戦でも打席の中で積極的に攻め、反応し、MVPを獲得する働きをした。朝山打撃コーチは「誠也ならシーズン中もそれくらいの意識で入ってもいい。(相手データや配球を)ちょっと考えすぎているところもある」と自然体を促している。データを度外視した投手との勝負から、打者としての感覚が研ぎ澄まされていくかもしれない。

純粋に野球と向き合った打席を経て、20日の開幕までを過ごす。「試合が続くけれど、けがをしないで1打席1打席大事にやっていきたい」。メモリアルアーチで弾みをつけて、開幕へ調整のペースを上げていく。【前原淳】